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第13話:小さな支持者たち
追放処分が検討されたその翌日、クオンは市民区の裏通りを歩いていた。
広場の大画面では、国家による「未来修正報告」が流れ、明るい音楽に合わせて「今日の秩序」が宣伝されている。
子どもたちは笑い、親は安心した表情で端末にサインをしていた。
社会全体が「上書き=正義」に酔っている中で、クオンの姿は異物のように浮いていた。
その背後から声がした。
「……あなたがクオン?」
振り返ると、三人の若者が立っていた。
先頭に立つのはリサ。
肩まで伸ばした黒髪を束ね、眼差しは鋭い琥珀色。
小柄だが姿勢は堂々としており、モカのシャツに茶色のロングコートを羽織っていた。
額の第三の眼は微かに光っていたが、力は弱いようだった。
その隣にはトーマ。
背が高く、筋肉質な体格に緑の作業服を着ていた。
短く刈った髪は深い茶色、瞳は灰色で、第三の眼はまだ幼い光しか放っていなかった。
彼は腕を組み、警戒心を隠そうともしなかった。
もう一人はミナ。
栗色の髪を三つ編みにし、緑のスカートに灰色のカーディガンを纏った少女。
彼女の第三の眼はほとんど光らず、トピオワンダーとしては未熟に見えた。
しかしその瞳は澄んでいて、強い好奇心を隠していなかった。
「国家はあなたを“秩序を乱す異端”だと言ってる。」
リサが低い声で告げる。
「でも、私たちは知ってる。あなたが救った命の話を。……消えたはずの少年を戻したって。」
トーマは眉をひそめる。
「だが、そのせいでシステムは歪んだ。俺たちの暮らしが崩れる危険だってある。」
ミナが一歩前に出る。
「でも……私たち、信じたい。
“命は守るべきものだ”っていう、あなたの正義を。」
クオンは三人を見つめた。
灰色の瞳に揺らめくのは驚きと、わずかな安堵だった。
「……こんな社会で、その言葉を口にするのは危険だ。」
リサは口角をわずかに上げた。
「危険でもいい。私たちは、もう“造られた未来”に従うだけの市民じゃない。」
広場の方からは、国家の宣伝音声が響き続けていた。
「未来は必ず管理できる。秩序は我らに従う。」
市民の多くはそれを疑わない。
だがこの小さな路地裏で、クオンの正義に耳を傾ける者たちが現れた。
クオンは静かに頷いた。
「……お前たちの覚悟、受け取ろう。」
灰色の瞳が柔らかく光った。
孤独だった旅に、ほんのわずかだが光が差し込んだ瞬間だった。