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第14話:争奪の火種
広場の中央、巨大なホログラムが映し出す「未来修正報告」に人々が群がっていた。
その人波をかき分けるように、クオンは小さな少年の手を握って歩いていた。
少年──レイン。
まだ十歳ほどで、短い黒髪に大きな水色の瞳。
額の第三の眼は未発達で淡くしか光らない。
彼は数日前、事故で命を失ったはずの存在だった。クオンが救出し、この世界に再び立たせた命。
だが、国家はすぐに動いた。
群衆を割って現れたのは、濃紺の制服を纏った管理職トピオワンダーたち。
先頭に立つのはラディウス。
白灰色の短髪に鋭い青緑の瞳、冷ややかな表情のまま群衆を一瞥する。
「クオン。国家の記録に存在しない命を、勝手に救い出したな。」
周囲がざわつく。
「存在しない命……?」
「じゃああの子は……」
さらに、反対側から民間の集団が現れた。
先頭にいたのはフォージャーの男、ダリオ。
長い黒髪を束ね、濃紫の外套を翻す。赤茶の瞳は野心に満ち、第三の眼が妖しく光っていた。
彼の後ろには数名の支持者たちが連なり、光る鳥や奇妙な小動物を従えていた。
「その子を俺たちに渡せ。新しい“象徴”に仕立て上げてやる。
死から蘇った奇跡の子ども──商品価値は計り知れない。」
群衆は一斉に騒ぎ出した。
「奇跡の子だ!」
「秩序を乱す異端だ!」
「国家が保護すべきだ!」
「いや、フォージャーの手で未来を導くべきだ!」
広場は一瞬にして戦場のような騒ぎとなった。
ラディウスが低く告げる。
「その子を渡せ、クオン。秩序のためだ。」
ダリオが重なるように叫ぶ。
「いや、俺たちフォージャーのものだ! 未来を造る証明になる!」
少年レインは怯えてクオンの腕にしがみつく。
小さな手が震え、水色の瞳が涙に濡れていた。
クオンは灰色の瞳を細め、声を絞り出す。
「この子は“人”だ。道具でも、秩序のための数字でもない。」
ラディウスとダリオ、国家と民間の視線がクオンに突き刺さる。
広場の喧騒が増していく中、命を巡る争いは避けられなくなっていた。
第三の眼が三者三様に光を放ち、広場全体が張り詰めた空気に包まれた。
ここから始まるのは、命そのものを巡る最初の大きな衝突だった。