テラーノベル
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リリアーヌは、まるで熱湯を浴びせられたかのように顔を真っ赤にして、フイッと顔を背けた。
だが、その白く細い指先は、隠しきれない喜びを抑え込むようにドレスの裾をギュッと握りしめている。
さらに、横を向いているはずの口角は、どう見てもだらしなく緩みかけていた。
……ああ、ダメだ。可愛すぎてやばい。
画面越しにしか見られなかった「世紀の悪役令嬢」のツンデレが
今、4Kを越える生身のリアリティを持って俺にぶつけられている。
「はははっ」
込み上げてくる幸福感に、思わず笑みが零れる。
「なっ、何が可笑しいんですの!」
「いや。今日も一段と可愛くて参っているだけだ」
息を吐くように、心からの本音をストレートに伝える。
前世、画面の向こう側の彼女に「可愛い」と叫びたくても届かなかったあの無念。
その反動だろうか。
照れなど微塵も感じない。
この世界では、愛を囁く言葉が魔法の詠唱よりもすんなり出てくる。
「っ…………!!」
リリアーヌはもはや真っ赤を通り越して
耳まで熟れたリンゴのように染め上げ、言葉を失って俯いてしまった。
震える肩が、彼女のキャパシティが限界であることを示している。
だが、俺の猛攻はここからだ。
「ところでリリアーヌ。君が食べたがっていた限定モンブランをさっき買ってきたんだが、一緒に食べないか?」
俺が鞄から取り出したのは、王都で最も入手困難と言われるパティスリーの逸品だ。
「えっ!? ほ、本当ですの!?」
リリアーヌの目が、一瞬で宝石のようにキラキラと輝いた。
隠そうとしても隠しきれない、甘いものへの欲求と期待。
「ああ。リリアーヌが喜ぶと思って」
「べ、別に私、そんなに食べたがっていたわけじゃありませんけどっ!」
慌てて表情を引き締めようとする彼女。
その健気な抵抗がまた愛おしい。
俺はあえて、少しだけ意地悪な笑みを浮かべて見せた。
「え、じゃあいらない?」
「?! そうは言ってないですわ! どうしても私に食べて欲しいと言うなら、食べて差し上げてもよろしくてよ!」
勢いよく身を乗り出し、必死に「食べてあげる体」を装うリリアーヌ。
分かりやすく喜びを爆発させ、尻尾があればちぎれんばかりに振っているであろうその姿を見ながら
(あ~~~~~生きててよかったあああぁ!!!いや、転生してよかった!!)
俺は心の中でうるさく叫び倒し、かつ深くほくそ笑む。
かつてのデュークは、仕事に忙殺されるあまり彼女を蔑ろにし
その心の隙間に「悪役」への道を作ってしまった。
だが、今の俺は違う。
仕事中毒で愛想が悪いデュークのイメージは
こうやって日々少しずつ、リリアーヌ専用の甘い蜜で溶かしていく。
彼女を断罪へと導くシナリオなど、俺の手ですべて書き換えてやる。
リリアーヌ攻略RTAは、今、極めて順調に進行中だ。
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