松平容保をはじめ幕府方の人物を相手に、対外交渉を一手に引き受けていた近藤が忙しいのは分かります。
身の周りの世話や用事をしてくれる存在がいれば、ずいぶん助かることでしょう。
とはいえ、どうせ頼むならば気心知れた昔なじみの者を使うほうがよいはずなのに、なぜ京に来てから雇った若者を、近藤自らが選んで小姓に任命したのでしょうか。
有名な小姓として加納惣三郎という人物がいますが、近藤の小姓は歴代何名かいるため、ここでは人物は特定しません。
この「小姓」の役目ですが、戦国期の小姓のように身の周りの世話や取り次ぎ、雑用などさまざまなことを担いました。
新選組局長付きの小姓です。
大変多忙だったと推察されます。
とはいえ、小姓の仕事はそれだけでしょうか?
士道に背くまじきこと──局中法度第一条です。
背けば切腹という鉄の掟に、隊士たちは縛られています。
しかし「士道」とは一体何なのでしょうか。
この第一条に関していえば、いかようにも解釈できます。
運用次第で隊士の生命を奪うことのできる条文なのです。
そんな掟があり、厳しい上下関係を強いたうえでの「局長」と「小姓」です。
局長の命令は絶対。
たとえそれが理不尽なものであってもです。
ここで、幹部に与えられた個室が俄然意味をなします。
襖で仕切られた空間の中で、一体何が行われていたのか。
想像してみてください。
日本家屋の襖というのは、絶妙な距離感を演出するものです。
中は見えない。
しかし、気配は感じられる。
声だって聞こえる。
そんななかに局長と小姓。
ときに二人きりになることもあったでしょう。
行為があったかどうか──それについては否定派が多いのが現状ですが、ここではBL学的見地から性行為があったと仮定して説明を続けます。
襖で仕切られた個室の中での行為。
ここで、声を抑えるというシチュエーションが成立することに注目してください。
思わず漏れる声を抑えるために、両手で必死に自分の口を押さえるという構図です。
しかし、雰囲気や音、匂いもあったでしょう。
たとえ声が聞こえなかったとしても、周囲は何がおこったか察することは容易い。
日本には、よいことわざがあります。
──壁に耳あり、障子に目あり。
新選組隊士230名は互いの営みを盗み見、盗み聞きしあえる環境にあったのです。
大部屋であれ個室であれ共通していえるのは、声を抑えるというシチュエーションです。
230名、5万通り以上の組み合わせが、このシチュエーション下で生活を共にしているなど、日本史BL学の中でも特筆すべき事態です。
検定では誰を主題に小論文を書くよう求められるか分かりません。
「空間」に注目することで、どの隊士にも応用がきくはずです。
何本か小論文を書いて、検定試験本番に備えておきましょう。
過去問から傾向を考えるに、新選組に関してはまだまだ解説しなくてはならないことがあります。
関わる人物の多さ、萌えポイントが多岐にわたることから、二部に分けてお伝えしたいと思います。
次回は新選組副長土方歳三の秘めた想い、それから彼の周囲の男たちについてご説明します。