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だから私は天才だ。

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だから私は天才だ。

3 - 泣くなよ、天才が。

♥

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2025年08月11日

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川野の泣き顔は可愛かった。



まだ私だけが表彰台に立っていた頃、普段よりも大きな大会があった。


川野は誰よりも意気込んでいて、みんなが帰った後も自主練をしていた。

私も稀にお供していた。


放課後。

夜。


日中の熱が嘘のように冷めた 静かなグラウンドに、乾いた土を蹴る音だけが響いていた。


跳ねた土が口に入る。

唇を噛み締める。

それでもなお、彼女は世界を睨みつけた。

そして、また足の筋肉に力を込める。





大会当日。

いつも川野は、がんばる。と笑顔で私に言ってから跳ぶのだが、その日は違った。

笑顔をしていても、どこか笑っておらず、不安が喉につまったように、彼女には珍しく、終始緊張が張り付いていた。





そんな大会がおわった。

私は3位。

川野は表彰台には立てなかった。


私は、川野が結果を知らされていた時の、彼女の顔を今でも覚えている。


あれは、怒りでも、悲しみでもないと思う。

無力さと、やり場のない絶望だ。


その後、興奮の熱が冷めた背中がぽつんと集会場に残っていて、私はそんなしおらしい姿を見つめていた。




他の競技もほとんど終わり、自分たちのテントに戻っていた。

川野と私は、おつかれさま。と顧問や先輩に労われた。


川野は笑顔で対応していたが、私にはわかる。彼女の胸からは、ごっそりと生気が抜けていた。




大会では、最後の種目である、リレーが始まった。

私の陸上部からは先輩が出るので、みんなフェンスに身を乗り出して応援していた。


会場を、声援が包み込む。

隅から隅まで、余すことなく、選手の熱気が埋め尽くす。




その中で、私は川野を見た。







泣いていた。


静かに声を殺して。


誰にも悟られぬように。







美しかった。

たった、一つの空間が切り取られたように。

場違いなほど美しかった。


しおらしく、かわいそうで、可愛らしい。

女々しく、ズルい。




今思えば、私は川野を見下していたのかもしれない。

だからこそ、彼女を超えられなくなった私は

今になってこう思う。







天才が泣くなよ。




愚かで、意地の悪い戯言の自覚はある 。

たぶん。






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