「……お、およ……?」
ここは? ここはどこであろう?
一面に広がる、花畑。
一体、どこまで続いているのだろうか。
見渡す限り、永遠だ。
と云うことは……
「もしや、私は死んだのか……?」
口にしてみて、やっと実感が沸々とからだの奥深くからわいた。
「や……やったー! 遂にやった! 遂にやったぞ! 遂に成功した! 待ち望んでいた現世の世界に、今私は存在している!」
花畑の上で私は何度も跳ねる。
ああ、死ねた! 死ねたのだ!
これ以上にない幸せ! 誕生日を迎えた時より、遥かに嬉しい! 遥かに、遥かに勝る!
「るっせえ! 死んでも尚、ピーピー騒いでんじゃねえよ!」
「げ……この声は……」
怒った声のする方向を見る。
そこには思っていた通りの人物が立っていた。
……少し、服が破けていたが。
「何だい、中也。……というより、どうして君まで、ここに……」
「はあ? 忘れちまったのか、この阿呆青鯖。異能を使い果たしてコロッと逝っちまったんだよ」
……ああ、思い出した。あの時、中也の汚濁を受け止めきれなくて……
「ははっ……喜んでバカだった……」
なんだ、自殺じゃないのか。
「……はあ……気分わりい……俺あ、ここら辺ぶらついてくる。なあんで、俺が、年がら年中発情期霜降り男と心中しなきゃいけなかったんだ……」
「私だって蛞蝓と心中したくなかった。どうせなら美人な女性と心中したかった。」
「そうか……あ? 着いてくんな。万年霜降り発情男。」
「私は小さい君を心配して言ってるんだよ?」
「てんめえ……! この期に及んで殺されたりねえみてえだなあ!」
「やーだなあ〜? 私はもう、死んでしまっているんだあよ〜? だから、私を殺すことはでーきぬ〜。あれえ? 更年期じゃなあい?」
「殺す!」
少しだけ、またあの時に戻ったみたいで、少し楽しかった。
……ちょっと待ってくれ。
ふと、私の目に花畑で駆け回る子どもたちが目に入った。
いや、私が見ているのは子どもなんかじゃない。
見知った顔、見知った背丈、見知った体格。
まさに、まさに、変わらぬ。
「おだ、さく……?」
織田作と口にすると、織田作は私に気がついたのか、しっとりとした笑顔で手を振った。
「織田作……! 織田作、織田作!!」
「はあ?! ちょっ、お前……」
織田作がいる。
織田作、織田作。
私ね、ここまで生きてきたんだよ。
織田作の言う通り、人を救う側になって、がんばって生きてきたんだ。
織田作、織田作。あの時、助けてあげられなくて、ごめんなさい。
ずっと、私も一緒に死にたい思いだった。だから、だから、それがようやく叶ったんだ。
「織田作! 織田作、織田作! 僕、僕! 一生懸命にがんばったんだ。どんなに辛くても死にたくても、がんばって生きてきたんだ! 名誉ある死を、してきたんだ……!」
私はがむしゃらに走って、織田作に抱きつこうとした。でも、織田作は、
「太宰……すまんな、お前はまだ……早いさ」
と、言って、私と私の後を追ってきた蛞蝓もろとも、川に落とした。
ゴボッと口に水が入って、咳き込んで、私はまた意識を落とした。
コメント
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なるへそ…そういうことか。 取り敢えず織田作がどうしようも無いほど優しい事は分かった。太宰さんの感情とかが溢れてて好きです💓💓 題名とか考えてもやっぱもう好きっす。なんか羊右ちゃんLOVEすぎて最近心臓爆発してるんじゃ無いかと……まぁいっか