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「俺が大学生の時……お前が生まれたか生まれなかった時ぐらいの時、伊藤、と言うやつと仲が良かったんだ。」
「そこから結構一緒に大学で動いたり、途中で他の奴とも仲良くなったり、一緒に酒を飲んだりしたんだ。」
「たくさんのこと大学で学んで、幸せ、だったんだ。数年の仲だったな。結構長い間一緒にいたはずだ。」
「なのに」
「伊藤は逃げた。」
「二日酔いで痛む頭を起こして、寝起きの時に机の上に俺が連帯保証人になっているあいつの借金の借用書と養子縁組の手続きができる書類がご丁寧にシワなく置かれていた。」
「絶望、だったよ。俺の幸せがそこから伊藤の手で壊された感覚がしたんだ。」
「そこにお前もいた。」
「紙と一緒に赤子ぐらいの時のお前がいた。」
「一緒に入っていた手紙には『俺の子。母親とか詮索すんなよ』とだけ伊藤の時で書かれていて、」
「捨てようかとも思ったけど、親に捨てられた子だ。可哀想だなと哀れんだから、俺の養子にしたんだ。」
「今思うと、お前は施設にいた方が絶対に幸せだったんだから、養子にしなければ良かったな。」
そんな事言わないで。今の方が絶対に幸せだから。
「そこからは怒涛だったな。」
「大学を中退して、日夜働いて。」
「それでも借金は利子とかで膨れ上がっていて、なかなか返し切れる額ではなくて、」
「俺のなりたい職業にも付けなかった。」
「お前の世話は、俺の友達に時々手伝って貰っていた。今も、借金には関わらせたくないけど、時々手伝って貰っている。」
「お前が物心つく時には、俺は極度のストレスで酒に溺れていた。」
「俺の幸せなんて壊されてから戻らなくなっていたんだからな。」
「お前がだんだん成長していくと、より酒に溺れた。」
「酒しか頼れなかったんだよ。最低だよな。」
「酒に溺れた日々の中でお前はさすがと言わんばかりにどんどん成長していった。」
「だから似てきたんだ。伊藤に。」
「俺の人生を壊した張本人に。」
「だから、酒で、言い訳でしか無いけど、拳を作ってお前を殴っていた。」
「伊藤の代わりに。俺の恨みを全てぶつけていた。」
「そりゃ初めは罪悪感で押しつぶされそうだったよ。」
「でも、俺は言い訳を作った。」
「お前のことは哀情で引き取ったけど、言い換えればお前のせいで、お前が生まれてこなかったら借金や子育てを押し付けられなかったかもしれないと思ってしまったんだ。」
「じゃあこの拳は親がいないお前に対する愛情なんだ。反省しなければならないのだと考えた。」
「だから、俺は酒に溺れる度にこんな生活になってしまった恨みをお前にぶつけてしまった。」
「これが、全てだ。申し訳ございません。」
「お前は育つにつれ伊藤にどんどん似てくる。だからよりぶつけてしまった。」
「お前の幸せは俺によって壊してしまった。」
「お前は伊藤じゃないのに。」
「ごめん。」
父さんはごめんを重ねる。そんなこと気にしてないのに。
伊藤なんてどうでもいい。父さんに合わせてくれたのなら感謝?父さんを追い込んだなら恨むけどな。
父さんに会えたなら他の実の父なんてどうでもいいよ。