テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
クロノアさんが病院に運ばれてから、
世界の色が少しだけ鈍くなった気がした。
夜遅くまでふざけたメッセージを
送りあっていた日常が、
夢だったみたいに遠のいていく。
だけど、何かの間違いだと思ってた。
きっと数日経てば、
kr「心配かけてごめんね」
なんて優しい声が部屋に響くんだ――
そう信じたかった。
kr「トラゾー、来てくれてありがとう」
クロノアさんは、
ベッドの上でもやっぱり
クロノアさんらしく笑っていた。
kr「みんな来たよ。ぺいんとも、しにがみくんも――ほら、この前撮った写真、見せるから」
tr「またみんなで一緒に遊べたらいいな」
俺は、できるだけ笑ってみせた。
でも、どこかでこの時間が終わってしまう
予感がずっとあって、胸が苦しかった。
日々、クロノアさんの体調は
静かに悪くなっていった。
kr「トラゾー、ありがとうな。俺、みんなと出会えて、本当によかった」
弱っていく声を、何度も否定したくなった。
でも優しい眼差しは、
もうすぐ自分だけのものではなくなって
しまうことを告げていた。
クロノアさんが旅立ったのは、
まるで静かに寝息が止まるような夜だった。
みんなでそっと手を握り、声をかけた。
「また会おうね」
返事はもうなかった。
でも、確かな温もりが、
たしかにそこにあった。
春が来て、桜が咲いた。
けれど、みんなで見る桜は、
去年とはまるで違っていた。
sn「…今日はクロノアさん、好きだったお菓子持ってきたよ」
しにがみくんがそう呟き、
お供えの袋をそっと置く。
pn「みんなで食べようか。クロノアさんあのお菓子好きだったもんね」
ぺいんとも微笑む。
俺は何も言えない。
ただ、クロノアさんの名前を心で呼ぶたび、
胸がきつく締め付けられる気がした。
四人で行った公園、
四人で食べたアイス、
四人で交わした冗談――
全部が眩しくて、
眩しすぎて、
今は直視できなかった。
家に帰れば、
クロノアさんからの未読のメッセージや、
ボイスメッセージ。
kr「また明日、話そうね」
繰り返し再生しては、
同じ場所で涙が溢れる。
日々は、止まらずに流れていく。
学校もいつも通りに始まり、
日常は容赦なく続く。
でも、クロノアさんがいない。
ひとり分だけ、空っぽの椅子が
あるような気がしてならなかった。
sn「トラゾーさん、今日も一緒に帰ろう」
しにがみくんが微笑んで声をかけてくれる。
tr「うん……」
と答えながら、
やっぱりもうひとりの声が
どこかから聞こえてくる気がする。
pn「大丈夫、トラゾーも、ぺいんとも、しにがみも、本当によく頑張ってるなって…きっとクロノアさんも、そう思ってるよ」
ぺいんとも、優しく背中を押してくれる。
それなのに、心の中にはいつも
一つだけ埋まらない穴が残ったままだ。
家に帰っても、
クロノアさんとの記憶が消せない。
机の上に残ったメモ、
スマホに残った写真、
夜中に送られてきた
kr「眠れないけど、トラゾーは元気?」
っていうメッセージ。
全部、愛しくて、痛い。
ある日、しにがみくんから
sn「明日、公園に行きませんか」
と誘われた。
tr「うん…行こう」
春の風の中で集まった三人。
pn「クロノアさんの好きだった所のベンチ、みんなで座ろうよ」
ぺいんとが言い、三人はそっと座る。
ベンチはちょうど四人が座れる広さだった。
クロノアさんの声が、
風に乗って聞こえる気がした。
「トラゾー、今日はどんな一日だった?」
きっと、こんな風に優しく
尋ねてくれたのだろう。
tr「…俺さ、今でもクロノアさんのこと思い出すよ。いろんな瞬間に、ふと名前を呼んじゃうんだよね。……寂しいけど、それでも生きていかなきゃいけないんだよな」
sn「僕も…忘れられません。でも、クロノアさんの分まで笑ったり、泣いたりしたいって思うんだ」
pn「俺も、クロノアさんに会えたから今の俺がいるんだよ。本当に、ありがとうって…言いたい」
三人はしばらく、沈黙した。
涙を堪えながら、どこか温かい
気持ちも同時にあった。
それでも、クロノアさんのいない時間は、
まだ苦しいままだった。
春が過ぎ、やがて夏が来る。
夕暮れの屋上でひとり
ぼんやりしているとき、
ふと空を見上げる。
そこにはもうクロノアさんは
いないはずなのに、
不思議と優しい声が届く気がした。
「大丈夫、ちゃんと見てるからな。トラゾーも、みんなも、大切な仲間だから――」
涙が頬を伝う。もう隠さない。
クロノアさんの分まで、
生きて、
笑って、
時々泣いて、
そして少しずつ前を向こうと決めた。
でも、名前を呼ぶたび、
今もまだ、ほんの少し胸が痛む。
それが、クロノアさんと
過ごした時間の証なのだと思いたかった。
たとえ姿を見失っても、
記憶の中のクロノアさんは、
ずっとここにいた。
最近、やっとクロノアさんの
好きな音楽を聴けるようになった。
みんなで集まっても、
自然に笑えることが少しずつ増えていった。
でも三人とも、
クロノアさんの話になると、
どこか寂しそうに笑う。
それでも一日一歩ずつ、
クロノアさんのくれた優しさと一緒に、
前を向いて歩いていく。
tr「明日も、また、みんなで桜を見に行こうね」
誰ともなく呟いたその言葉が、
優しく空に溶けていった。
――クロノアさん、ありがとう。
??「こちらこそ」ニコッ
コメント
4件
なんで感動系がこんなお上手なのだ… 普通に尊敬します
うわぁ、、めっちゃいい、、いや、マジで、うわぁ、、(?)言葉に出来ねぇ、凄さがある、、こんなもの物語書ける🥀ちゃんを尊敬します( . .)"