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私はすぐさまお爺さんに目をやると、赤黒く染まった、先がよく尖った包丁を手にしていた。
席の端に座っていた警察官は皆、赤い血を腹部から大量に流していた。中には、家族の写真を握りしめ、大粒の涙を流している人もいた。
ここに居る誰もが思う。「生きたい。」「死にたくない。」____と。
「あおいちゃん!署長を!!私が止めるから早く行って!!!」
聞き慣れた声が聞こえる。
「で、でも!それじゃぁ先輩が!!」
「あおいちゃん!!私は大丈夫、後から追いつくよ、先に行ってて!」
いつもと同じ優しい、でも何処か寂しいような、そんな声で私に行動を示す。
「……絶対ですよ!」
うん。と先輩の返事が聞こえる。背中を向けているが、きっといつものあの顔で可愛いエクボを見せながら笑っているんだろう。
私は署長を外へ避難させる為に席をたち、重たい足を精一杯に動かす。
警察官らしい怖そうな、シワと白髪の目立つ顔の署長に駆け寄り、近くにあったドアからその場を後にした。
数人の警察官、そして私のペアである先輩が、赤い紅い、アカク染まったお爺さんと交戦している。その姿は怪物のようにもみえた。
大理石で作られた冷たい階段降りる。それはいつも何十段も長く感じられた。
1階の出口向かって駆ける。
タッタッタッ____。と、少しリズミカルな足音が聞こえ、正面を見る。
そこには、鋭利な刃物を持ち、布を被った男がこちらに向かって走ってきている様子が伺える。
布の下は見えないが、奇妙な顔で笑っているのが目に浮かぶ。
瞬間、あんなに遠くにいたはずの男がもうすぐそこにいる。3mもないだろう。
(やばい。殺される。)
そんな言葉が脳内を埋めつくす。
襲いかかってくる男を私は必死に食い止めようとしたが、横をすり抜け、署長の腹部を刺した。
私は今までにないスピードで腰にあったナイフを取り出し、その布を被った男の首をかき切った。
彼は血をながし、息を止めた。
署長の腹部を、私は真っ赤に染まった手で押さえつけ、血管を圧迫する。警察官の心音はどんどん小さくなっている。