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「……こんな中で、よくもまあ冷静でいられるよな」
源喜はスダに向かって、苛立ちを露わにしながら言った。
その声には、彼の中で膨れ上がった怒りと無力感が含まれていた。
ハルキはその様子を見ながら、少し距離を置いて考え込む。
ふと、彼の視線が葉月に向かう。
葉月は気絶している胡桃の傍で懸命に介抱していた。
「自分も声をかけるべきなのか……でも、一歩が踏み出せない」
ハルキは唇を噛みしめ、無力さを感じていた。
混乱と恐怖の中で、彼は自分の無力さを痛感していた。
一方、教室の隅では兵士たちが動き始め、死体を隅に運んでいた。
死体に黒い布をかけ、何の感情も表情も見せずに作業をしている彼らの姿が、冷徹であり、まるで人間の命を無機質な物のように扱っているかのようだった。
「ちょっと、教室が狭くなりますからね。隅に寄せましょうか」
スダは、まるで掃除を命じるかのように軽い口調で言った。
その言葉を受けて、兵士たちは血の滴る黒い布を次々と運び、教室の隅に積み上げていった。血の跡が生々しい。
その光景を見つめる生徒たちは、口を閉ざし、息を潜め、ただその場に立ち尽くすしかなかった。
源喜は手にしたバットを強く握りしめ、今にも兵士たちに襲いかかりそうな気配を見せたが、スダが軽く指摘した。
「あ、その兵士には攻撃しないほうがいいですよ。何が起きるかわかりませんから」
その言葉に、源喜は一瞬ひるむ。
そして、悔しそうな顔をしながらバットを握る手を緩めた。
ペア装置の爆発を目の当たりにしたばかりで、誰もが下手に動けないことを理解していた。
運び出された遺体は、梶原の死体の近くに積み重ねられていった。
黒い布に覆われたその姿は、教室の隅で静かに積み重なり、まるで人間の命が無意味に積み上げられていくかのようだった。
生徒たちはその光景を見つめることしかできず、目を背けることもできなかった。
(自分もこうなるのか……)
その思考は、全員の中に同時に浮かんだ。
教室内には、静寂と共に、芽美が駆け回っていた時の悲鳴と血の匂いが漂っていた。
コメント
1件
第19話、読み終えました……。 兵士たちが死体を黒い布で覆って積み上げていくシーン、本当に胸が痛かったです。スダがあまりにも軽い口調で指示するのが、むしろ恐怖を引き立ててて。 「自分もこうなるのか」っていう全員の思考が、静かに共有されてる感じがすごく伝わってきました。 源喜の怒りも、ハルキの踏み出せないもどかしさも、すごくリアルで……この重さ、麻木香豆さんにしか書けないと思います。 次、どうなるんだろう……。続き、ちゃんと読みますね。
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