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- おさでい side -
「なと!!!」
誰かの声が、響いた。
目の前で
やなとの体が崩れる。
「………っ、」
反射的に走る。
床に倒れ込む前に。
でも、遅かった。
気づいた頃には
どんっ!
と大きな鋭い音が鳴った。
すぐにやなとの体を腕で支える。
「しっかりしろ」
顔を覗き込む。
__明らかにおかしい。
「……っ、はっ、……、」
呼吸が浅い。
焦点も合っていない。
「ゆた!タオル!」
「にっしー、水!」
気づいたら、声を飛ばしてた。
周りも一斉に動く。
でも、
( 遅い )
その考えが頭をよぎる。
( もっと早く止められた。)
さっきの顔。
無理してるって、分かってた。
それでも、
「大丈夫」って言葉で流してた。
( なんで止めなかった 、、)
奥歯を噛み締める。
「やなと、聞こえるか、」
もう一度声をかける。
でも、
返事はない。
ただ、苦しそうに息をしてるだけ。
「……っ、」
その瞬間
ぐっと体が軽くなる。
「………え、」
腕の中の重みが抜ける。
「やなと、?」
反応が、ない。
「……っ、意識…、」
誰かの声が震える。
「呼べ…すぐ。」
誰かの低い声。
周りが呼び出す。
焦るな。
でも、
焦ってる。
頭の中がぐちゃぐちゃになる。
( また 、 )
( 最悪の方ばっか考えるな )
必死に押し込める。
でも、
止まらない。
( このまま起きなかったら …? )
その考えが
1番怖い。
「…大丈夫、」
誰に言っているのか分からない言葉が出る。
「絶対…大丈夫、」
自分に言い聞かせるみたいに。
そのまま、
やなとの手を握る。
少し冷たい。
「…絶対戻ってこいよ…」
小さく呟く。
「まだ終わってないだろ…」
その声は、
さっきよりもずっと弱かった。
周りでは
みんなが動いてる。
でも、
どこか現実味がない。
ただ1つだけ
はっきりしてるのは___
( 守れなかった )
それだけだ。
「……っ、」
拳に力が入る。
でも、その手は
やなとの手を離さない。
「…次は絶対。」
小さく呟く。
それは
誰にも聞こえないくらいの声だった。
でも、確かに
そこに ” 覚悟 ” が生まれてた。
コメント
1件
作品大好きです。 これからも頑張ってください!!