テラーノベル
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ある日、ヤマは麻雀を覚えた。
夜になると地元で友達と雀荘へ行くようになった。
朝まで帰ってこない。
浮気をしているわけじゃない。
女と会っているわけでもない。
飲みに行っているわけでもない。
頭では分かっていた。
でも、心は違った。
賭け事が嫌いな私にとって、それはどうしても受け入れられなかった。
「女と会ってへんからええやん。」
そんな話じゃなかった。
あの時、浮気したやん。
その一言が、何度も心の中で繰り返される。
きっと私は、欲張りだった。
一度壊れた信頼を、完璧な形で取り戻してほしかった。
でも、それは簡単なことじゃなかった。
私はどこかで期待していた。
初恋の相手と、大人になって再会して。
恋をして。
そのまま結婚する。
漫画みたいな恋愛を。
でも現実は違った。
小学生の頃に知っていたヤマは、もういなかった。
そして私も、あの頃の私じゃなかった。
離れていた十年は、思っていたよりずっと長かった。
今なら分かる。
お互い大人になれば、お互いの知らない顔があるのは当たり前だった。
でも、あの頃の私はまだ、その当たり前を受け入れられなかった。
期待していた分だけ。
現実を知るたびに、少しずつ悲しくなっていった。
東 桃子
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桜咲かな
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コメント
1件
うわあ、このエピソード、胸に沁みました…。麻雀という「悪意のない」行動が、過去の浮気の傷と重なって、じわじわと心をすり減らしていく感覚。特に「一度壊れた信頼を、完璧な形で取り戻してほしかった」という一文に、その切実さと無理さがぎゅっと詰まっていて、読んでいて苦しくなりました。十年の空白が生んだ「お互いの知らない顔」を、受け入れなければならない大人の現実と、それでも期待してしまう少女の心のせめぎ合いが、とてもリアルで美しかったです。次が気になります…!