テラーノベル
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日「ちょっと遅くなってしまいました。 」
街灯の並ぶ閑静な住宅街を歩く。
その足取りはもう時間が遅いということもあってかなり早足だった。
日(自習室で勉強をするというのは伝えてあるので大丈夫だと思いますが……)
きっと家族は夕飯を作って待っているだろう。
今日のメニューはなんだろうか。家族は心配していないだろうか。そんなことで頭が埋め尽くされていた。
埋め尽くされていたから、後ろの気配に気づくことが出来なかった。
日「ん”ん?!」
後ろから誰かに襲われて、口を塞がれる。
あまりに急なことで抵抗することも出来ないまま捕まってしまった。
日(だ、誰……?!)
抜け出そうと必死にもがくも、相手の方が力が強いらしい。ビクともしなかった。
何とか手だけでも抜け出そうと動いていると、耳元で囁かれた。
「やっと捕まえられた……日本くん」
ねっとりとして、湿っぽい声と生暖かい吐息が耳にかかる。
全身の毛が逆立つ感覚がする。
日(早く、抜け出さないと! )
その瞬間、めまいがした。
日(あ、あれ)
頭がボヤボヤして、脳が情報の処理を辞めた。
最後の抵抗も虚しく、突然襲われた感覚に身を委ね、意識を失った。
「はは、やっと……!」
日「ん……」
ぼんやりと意識が浮上する。
なぜ自分は気を失ってたんだ?
回りきっていない頭で思い出す。
夜道を歩いていたら、急に後ろから襲われて……
自分の置かれている状況を思い出した瞬間、恐怖が芽生えた。
必死に辺りを見渡す。
たくさんのゴミ袋。カップラーメンのゴミ、エナジードリンク、薄汚れたフローリングと壁紙、つけっぱなしのパソコンと、妙に綺麗なベッド。
その全てが知らない風景だった。
日(どこ……ここ……!!早く、早く逃げないと!)
脳が言っている。「ここは危険だ。」と。
逃げたい。逃げたいのに。
口をテープで塞がれている。腕を紐か何かで縛られている。
まだクラクラしていて、思考がどこかはっきりしない。すりガラス越しのようだ。
でも、誰もいないと思われるこの今、逃げるには絶好のチャンス。
早く解いて、逃げ_____
「起きたんだね」
縄を解くのに意識が持っていかれていて、人が帰ってきていたことに気づかなかった。
ゆっくりと振り返る。
薄い髪の毛、少し肥えた腹、清潔の観念のクソもないような容姿。
そんな男が立っていた。
こんな人、知らない。
これからされるかもしれない最悪な展開を想像して戦慄する。
叫び、助けを求めたくてもできない。
「そんなに怯えないで。大丈夫だよ。」
男はにちゃにちゃした声でそう言う。
「やっと日本くんを手に入れられた。」
恍惚とした表情でそう言う男に強い恐怖を覚える。
離れようと後退るが、壁に当たってしまう。
「1度ガムテープと紐を外そうか。でも騒いだりしたら、どうなるかわかるよね」
不気味な笑みを浮かべる男を見て、叫ぶ気など無くなった。
ベリッ
日「いっ、」
乱雑にテープを剥がされ、紐を解かれる。
幾分か動きやすくなり、少し安心する。
日「なんのために、私をここへ……?」
いちばん気になっていたことを問う。
男は頬を赤らめながら呟いた。
「日本くんに一目惚れをしたんだ。それはそれはもう、雷が落ちるような、ね。日本くんに会いたい。手に入れたい。汚したい犯したい!そう思っただけだよ。」
その言葉に吐き気がした。
そして、さっき想像していた最悪の展開が確定してしまい、深い絶望感に見舞われる。
密室、男と2人きり。逃げ場なんてなかった。
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