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とにかく証拠を集めよう。
私はその投稿の画面のスクリーンショットを撮った。動画でも残しておこうと思い、辛い気持ちを吐露しながらそのスクショと自分の生の声を動画に収めた。
暴れて無残になった部屋ごと撮影。もちろん、涙ながらに声を詰まらせながら。意外に演技できるものなんだ。
いや、演技じゃないよね。ほんとに悲しいし辛いことだから。きっとこの動画はいつか役に立つはず。
私が愛した涼二はもういない。この世のどこにもいないんだ。
この一瞬で、あの男は私を裏切り続けた憎い男へと変わってしまった。
愛していたからこそ裏切りの代償は重い。
『涼二のプライド』
『尊厳』
『社会的地位に財産』
そのすべてを彼には払ってもらう。それでも足りないくらいだわ!
私が涼二を愛していたぶんだけ彼の人生を丁寧に壊すのよ。気づいた時に、死ぬほど後悔させてやる。
愛人との仲を取り壊すだけじゃだめ。もっと痛い目に見させるには――そうだ!
愛人を別れさせ屋を使って別れさせた後、私に縋ってきたら、辛辣に捨ててやればいい。
私が味わった絶望以上に、涼二をドン底に落としたい。
愛する者に捨てられる絶望を、味合わせてやりたい。でも、それだけじゃまだ社会的地位に財産を奪うことはできない。
そうするためには、なにからすればいい――?
リビングに散らばった破片で足を切ったりしないように気を付けながらソファーに深く腰を沈め、自分のスマホを手に取り、先ほど撮影したスクリーンショットの画像を読み込んだ。
私の心を粉々に砕き、絶望を与えてくれたそれを再び見る。
スマホの画面に焼き付いたままの証拠画像を睨みつけながら、私は静かに息を吸った。
今や涙は枯れ果て、代わりに冷たい決意だけが胸中で凝固した。
――天魔
彼らの会話で出てきた名前。裏垢の投稿で晒された会話ログ。その中で涼二が名指していた男の名前。
別れさせ屋のプロ、【天魔(てんま)】という男。私はその名を頭の中で反芻する。まるで都市伝説の悪魔のような名前ね。
天魔を自らの手で呼び出し、味方に付けるにはどうすればいい?
とりあえず検索してみよう。
検索エンジンに天魔の名前を入力してみたが、ホームページみたいなものはなかった。彼に関する無数のSNS投稿がヒットしただけだ。天魔の後にスペースを入れて、『天魔 別れさせ屋』で再検索してみた。
しかし該当の別れさせ屋のホームページなどは存在せず、見つけることはできなかった。
うーん……SNS内で探さなきゃいけないのかな。
伝説なんていうから、てっきり個人のホームページか代わりのSNSがあって、そこから依頼できるのだとばかり思っていた。
さて、どうやって探そうかな。ひとつずつ投稿を拾うしかないか。地道な作業は便利なAIにやらせよう。
私はチャットに天魔の情報を打ち込み、捜索しやすいプロンプトを細かく打ち込んでリサーチをかけた。
こっちを調査している間に、私は『別れさせ屋』という職業について調べることにした。その名の通り、単純にパートナーなどを別れさせるためのものだとは思うけれど、一度きちんと調べておいた方がいいと判断した。
「別れさせ屋」とは――浮気や不倫などの事実を意図的に作り出すことによって、カップルや夫婦、浮気や不倫関係を終わらせるためのサービスを提供している会社、とあった。
へえ、別れさせ屋って会社なんだ。個人経営とかじゃないのかな。
調べると結構たくさんある。
そんな『別れさせ屋』(会社)は、サービス内容から裏稼業のように見えるけれど、管轄の公安委員会に探偵業届出を提出した上で許可を得て営業をしているらしい。
内容は、第三者からのアプローチなど、様々な手段を講じて両者の関係を引き裂くものらしい。 早い話、恋人や夫婦、愛人関係。壊したい絆を、代わりに終わらせてくれる人たちのことだ。
そんな彼らは、公安委員会に探偵業届出を提出して営業許可を得る……つまり認められていて、合法ってことね。
実際に別れさせ屋のホームページにも調べた内容と同じような記載があった。
そうなんだ。合法……なんか納得いかないけど。完全に裏っぽいのに。
注意点は、サービスを利用する際、悪質な業者に注意し、信頼できるかどうかを慎重に判断することが重要――そんなこと言われても、どうやって判断すればいいわけ?
別れさせ屋にクチコミでもあればいいけれど、そういうものはほとんどない。
合法と違法のあいだで揺らぐこの仕事は、裏切りもまた日常なのだろう。
工作費や成功報酬、うまくいかなかった時の延長契約。
そのたびに費用は膨れ上がる。
そして報酬料金の高さにも驚きだ。
安くて50万、高ければ200万円越え――
調査だけで終わることは稀で、ほとんどが仕掛けを含む。
誰かを堕とすための芝居には、それだけの代償がかかる。依頼主にかかる時間拘束と人件費、経費は相当なもの。
コメント
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第5話、読み終わりました。主人公の「愛していたからこそ代償は重い」という冷静な怒りがひしひしと伝わってきました。部屋の破片を避けながらソファに座る描写に、感情の昂りと同時に計算し始める冷めた部分が混ざっていて、その切り替わり方がとてもリアルだったなあ。天魔という都市伝説の悪魔みたいな名前の存在も気になります。合法的な別れさせ屋の仕組みまで調べ始めたのが、主人公の執念の深さを感じさせて続きが楽しみです!