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「きゃははは!」 教室では授業中以外いつでも誰かが甲高い声で笑っている。耳障りなことこの上ない。魔王時代、私のそばで声を出して笑う者などいなかった。不敬な行為だからだ。
いつか思い知らせてやろうと思っているが、この世界では余はまだ絶対権力者になっていないから我慢している。この世界の軍隊がどれほどの強さか調査中だ。取るに足らぬと分かれば政権を簒奪し、余がふたたび絶対君主として君臨するつもりだ。やつらに思い知らせるのはそのあとでも遅くないだろう。
「森さん」
いつの間にか午後の授業が始まって教壇に立つ教師に余の名を呼ばれていた。教師は冴えない中年男性。ところで転生後の余の名は森音露。転生前の名となんとなく似ている。
「何だ?」
「何だとは何だ? 敬語が使えないのか?」
「敬語? 使われることはあっても、使ったことはない」
「独裁者みたいなことを言うな!」
長年独裁者だったが、それが何か?
「ちょうどいい。政治の話をしよう。森さん、政治に必要なものは何だと思う?」
「恐怖だな」
「恐怖?」
「そう。為政者に逆らうと自分や家族が殺されると知れば、逆らう者がいなくなる。どんな政策を立案してもスピーディーに執行できるようになる」
「それは正しい政治だろうか?」
「正しい」
「なぜ正しいと言えるんだ?」
「余が正しいと言えばすべて正しい」
「いや、間違いだ。政治に必要なものは人権思想に基づいた民主主義だ」
「人権? 民主主義? 教師よ、為政者となった経験は?」
「もちろんない」
「なんだ。机上の空論か」
生徒たちはなぜか静まり返り、教師は馬鹿にするなと怒り出した。覚えておこう。余がこの世界を支配したら、真っ先におまえから人権を奪い奴隷にしてやる!