召喚した彼らはこれ幸いと、他にも放置していた魔獣についても同様に召喚者たちを扇動して倒させて、当人達も非日常に浮かれていた。
やがて彼らは戦闘職と生産職、その他と行動を別にしていずれも大きな働きを見せた。
そうするうちに彼らはその力を持って、ヒト種族の王国の王族の地位に手を出したのだ。既に元の世界に焦がれる者はおらず、チヤホヤされ好きなものを好きなだけ手に入れられる現状の方が理想だったのだ。
勇者には及ばずも並よりはずいぶんと高い魔力と、未だ解明されていないスキルを操る彼らに敵わず、彼らのもたらす知識や新しいもの、あるいは財に王国民は世界を渡ってきた彼らが国の頂点、中枢に収まることを良しとした。
この時に新たな王国が誕生したのだ。
初代召喚者たちはこの世の春を謳歌した。手に入らないものなどない。人々の方から擦り寄ってくる。金に溺れるもの、ハーレムを築く男に女。それでも王国はこれまでに類を見ない栄華を極めたのだ。
だがそれも初代召喚者の時代だけ。彼らの能力は遺伝しなかった。他の世界で名付けられた彼らが、世界を渡る時に付与された儀式の残りカスの魔力とともにその名前に起因したスキルを身につけていたものの、あくまでもそれが条件であれば、生まれてくる子供には引き継がれなかったのだ。ニホンの言葉で強い名付けをしても変わらなかった。
それでも国の中枢にいた者たちの一族。孫、ひ孫の代まででもその地位は守られ続けて、初代たちが築いた新しい王国と作り上げたシステムにより国民から搾り取る側にある彼らは貴族と呼ばれていた。
貴族とは、ニホンから来た英雄たちの子孫である。では子孫の彼らは英雄なのか? 否、そういうシステムの中で高い所にあるものたちである。
国民は知っている。とは言え直接の不満などはない。
初代たちは武力のみではなく、各方面に秀でていて彼らの言うところのチート、現代知識チートなどというもので財を築き自分たちの欲望のままに生きてはいたが、国民が享受した恩恵も凄まじいもので、生活レベルが一変するものだったのだから。
それまでの王国は王を置いている国とはいえ、衛生も流通も通貨も言葉、識字率も、まともと呼べるものは殆どなかった。
初代たちの生産職と呼んでいた者たち。そのスキルによって上下水道が整えられ衛生の概念が広められ、水で流すトイレなどというものまで普及した。
また、平和な国の出身らしく、スラムや孤児などを徹底して対策し、雇用の創出までした。その時建設されニホン人によって運営された孤児院の運営理念を『働かざる者食うべからず』とした。捨てられた子供を集めて生活させて、かつ孤児たちも働かせて自立と運営費の独自化を促した。
街には沢山の異世界の英雄たちの常識が増えていった。
ニホンの文明と同じなんて無理だけどこれくらいまで出来たならなんとか(原始レベルから抜けて)生きていけそう! くらいの所まで頑張ったらしい。
特に紙の普及による識字率アップは国民全員で取り組んだのだとか。その時にこの国の文字と言葉はニホン語というものに決められた。それに限らず大体のものはニホンにある物に近い物に置き換わった。
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