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「…………ならば……優子。俺の所に……来ないか?」
「!?」
またしても唐突過ぎる廉の提案に、優子は瞳を丸くさせながら、口元を両手で覆う。
「優子。俺は今でも…………君を……愛している。優子以外の女なんて…………今さら愛せない……」
「で……でも…………専──」
「君が前科持ちなんて、俺には一切関係ない。三年前、立川のホテルで君と別れた時…………もう君と会う事がないかもしれないとも思ったが、いつかまた、どこかで優子と巡り逢うかもしれない、とも思っていた」
「…………!!」
三年前と変わらず、深い愛で優子を想い続けてくれた廉の言葉に、キリっとした瞳が次第に潤んでいく。
「君の心の中には、まだ拓人がいるだろう。だが、俺はそれでも構わない。少しずつ、俺と向き合ってくれたらいい。アイツが『優子を支えて欲しい』と俺に頼んできた時、俺は…………拓人には申し訳ないが……全力で優子を支えたいって思った。だから…………『Creative Garden』に拠点を移さないか、と提案したんだ」
堰を切ったように溢れる廉の想いを、彼女は瞳を濡らしたまま、耳を澄ませている。
「俺は今も、ここの住居棟で一人暮らしをしている。ここからだったら、渋谷も近い。それに俺は…………再び巡り逢えた優子と…………もう離れたくない」
廉は優子の肩を引き寄せながら、人目も憚らず、掻き抱いた。
「…………私が前科持ちなんて一切関係ないって……言いましたけど……専務や会社に向けた誹謗中傷だって、たくさん浴びせられるかもしれない。私と一緒にいる事で、苦しむのは……専務なんですよ? 本当に……いいんですか?」
優子が胸の内を零すと、彼は抱きしめた腕を緩め、真摯な眼差しを向ける。
「…………誹謗中傷を受けたら、蹴散らすまでだ。もし、周りが優子に口撃してきたら、俺が全力で守ってみせる。そして、仕事で結果を出して黙らせてやる。だから君は何も心配せずに、皮革工芸の製作者として精進しつつ…………俺の…………最愛の女として……そばにいて欲しい」
「…………こっ……こんな私で…………いいん……です……か?」
彼女が辿々しく廉を見上げると、精悍な顔立ちが緩みながら綻んでいく。
「当たり前だろ? 今の優子は…………Hearty Beautyに在職中だった頃の君と同じように…………イキイキとしていて…………惚れ直しているところだ」
廉は真剣な面差しを優子に向けながら、小さな両肩に手を添える。
「優子。これから先、俺のそばに…………ずっと……いてくれるか?」
彼女自身の身勝手な思いで別れを告げた人に、一点の曇りもない想いと愛を伝えられた優子は、言葉を詰まらせながら、ぎこちなく頷く。
「…………優子。愛してる」
華奢な身体を抱き寄せられた優子は、廉の胸に顔を埋めながら、熱いものが込み上げていた。
こんな女を、ずっと愛し続けてくれた廉に、彼女の胸の奥が鷲掴みにされ、甘やかな痛みが迸る。
けれど、その涙は悲しいものではなく、優子の人生の中でも最高に嬉しく、尊いものだった。
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