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「セレスツィアナさんはこっちですよ。」
アリシアナにそう言われて私はため息を付きながら、隠されてあった転移魔法陣の上に立つ。
「これでいいの?」
「はい。」
アリシアナも転移魔法陣の上に乗って私の肩を逃さんと言わんばかりに掴む。その瞬間、辺り一面光に覆われ、そして目を開けたらそこは年前が集うシュールな光景になっていた。
「老けたわね。」
第一声がこれでいいのか、私。無意識に発された言葉に危機感を覚えたがまあ、大丈夫でしょ。皆大人だもんね。大丈夫よ…多分。
「「ふざけてるのか?」」
「「ふざけてるの?」」
駄目だった。皆ご立腹だったわ。男女関係なく、平等に私を睨みつける。アリシアナのときも思ったけどこうまで変わるもんなのね。年って怖いわ。
「いえ、ごめんなさい。皆、久し振りであんまり良く覚えていなかったからかしら。あまりにも変わりすぎて一瞬誰か分からなかったの。中身は子供の時と変わっていないようで安心したわ。」
私の嫌味たっぷりの言葉にこの国の王までが礼儀など忘れて私を睨みつける。
「何が言いたい?」
「皆、子供っぽーい。」
「今に見てろ。私達がお前の一族を今度こそ根絶やしにしてやる。」
わー、怖い怖い。国のトップかこれじゃあ、この国も終わりね。ジ、エンド。
「まさか、お前まで来るとわな。生きているとは思っていたが、まさかここまで腹を立たせてくるとは驚きだ。」
「うるさいわよ。ナルバック。あ、いや、今はウィルカルファ伯爵だっけ?相変わらずハーディナイツ伯爵家をいじめてるあの偉大なるウィルカルファ伯爵様でしょ!?」
「お前もいつか、ハーディナイツと一緒に根絶やしにしてやらぁ!」
相変わらず、短気なところも変わらないようで何よりです。
「あら、珍しく意見が合致しましたね。私も、この方は大っ嫌いですの。」
セリバルトネス侯爵夫人。現王妃の友人の一人。あんまり口を挟まない彼女が割って入って来るほど私は嫌われていることがよく分かる。いやこれは逆に好きなのでは?
「もしかして、私の事が、好…」
「それ以上言ったら殺しますわよ。」
前言撤回。私もこいつ嫌いだわ。私は用意されていた椅子に座る。椅子の数は合計7席。セリバルトネス侯爵夫人、ウィルカルファ伯爵、ローアンゼルク侯爵夫人、ミルフォルド伯爵、アルファテニウス・クアルトドット現国王陛下、そして私、セレスツィアナ・バルサイン子爵夫人。と、あと一人。チラリと残る一人に目を向ける。残る一人の名はマティウス。平民の身であるが、召喚勇者のたった一人の弟子だ。その強さは国一つ滅ぼせると言われている。真偽は知らないけど。
「皆揃ったな。」
勇者の弟子が口を開く。おいおい、王様を無視して話を進めていいのかな?チラリとこの国の王様を見ると僅かに体が震えている。あっ、そ。このビビリ目が。てか、同年代のおっちゃんにビビってるって、ぷぷー!笑いを必死に抑えながら話を聞く。
「精霊国と亜人国が手を結んだのは知っているな。まあ、それは良い。ただ俺が言いたいのは、魔国には手を出すな。」
誰もが呆気に取られただろう。魔国には手を出すな…って、それってあんたの師匠はそれを目標に走ってたんでしょ?それが何で弟子がやらないのよ。しかも、手を出すな?意味がわからない。
「何故です?貴方のようなお強い方が恐れをなすなんて。みっともないですわよ。」
セリバルトネス侯爵夫人、エリザベートが険悪な表情をしながら意見を述べる。同意。激しく同意。お前、ふざけるなよ。この私が居るのに手を出すなって?ふざけるのも大概にしろ、このビビリ。
「なんとでも言え。俺は家族を失いたくないだけだ。それに、俺の寿命も後僅かだ。5年も保たないだろう。」
「「!?」」
ここで衝撃の事実発覚。現在人類最強の男の余命宣告と言うね。それでか。こいつが居なきゃ多分、この人達は簡単に殺られるだろう。ま、私は戦力であっても、絶対に参加しない、戦力外の人類兵器だけども。
「お、お前、言ってる意味が分かっているのか!?」
ダンッと言う大きな音をたて、ウィルカルファ伯爵こと、ナルバックが立ち上がる。
「貴様こそ何を言っている?ただ、もう俺の寿命は長くないといっただけだが?それとも、俺をただの人類兵器と思っての言動だと受け取って、いいのか?あ?何だ、言ってみろ。」
ご立腹です。カンカンです。だって、もう眉毛がピクピクしてるし。それに、ナルバックが「あ、いや、その…」って、感じで縮こまってるし。
「言いたい事は全て言った。俺は帰る。」
そう言って、マティウスは転移魔法陣の上に乗る。
「待て!」
馬鹿王が待ったをかける。
「何だ?」
マティウスが不機嫌そうに振り向く。
「お前に息子が居ただろう?その息子を王立学園に入学させる気はないか?」
今そんなことどうでもいいだろ、この馬鹿、くそ、この駄目王!そんな私の思考とは裏腹にマティウスは少し考え込む。
「ああ、考えておく。」
そう言って、マティウスは転移魔法陣で帰ってしまった。しばしの沈黙が流れる。はあ、しょうが無い。私は口を開く。
「良かったわね。検討してくれて。」
「「黙れ。」」
そんな形相で睨まなくたっていいじゃない。全くもう。そんな中、ミルフォルド伯爵こと、アルフレートが口を開く。
「はあ、皆さんそんなピリピリしないで下さい。今考えても答えは出ません。」
多分、この中で一番大人なアルフレートは冷静に言葉を発す。
「そう…」
「「黙れ。」」
だから、最後まで言わせろよ!と言う叫びも虚しく完璧にスルーされる。
「確かにそうかもしれませんね。」
「ああ、そうだな。」
「同意です。」
「……なあ、なんだか、王である私を差し置いてさっきから話、進めすぎじゃないか?」
アルフレートのお陰もあり、場が少し紛れる。しかし、そんなほんわかした場を崩すような警戒音が鳴り響いた。警戒音?
「何事でしょうか。」
最初に反応したのはアリシアナだった。何が起きたかは知らないけど、ただ事では無いらしい。
「これは、亜人の魔力?」
今度こそ全員が立ち上がる。亜人。それは、人族のような体をしているが、背が低くいドワーフ、耳が長いエルフ、獣のような耳、尻尾をはやしている獣人。これが主な亜人だ。しかし、その中でもこんなセキュリティの高い場所に入れる種族がある。それは、獣人に属する黒犬族だ。
「「黒犬族!」」
全員がそう叫ぶ。その中に私も含まれて居るのだが、この場に置いて黙れと言う奴は一人も居ない。これはれっきとした、緊急事態だ。
「俺はカルティアを見てくる!」
「私も、シャルレラを!」
全員がバラバラに動く。お茶会に出席している子供がいる、アルフレート、ナルバックは急いで魔法陣に乗る。って、あ!私は咄嗟に転移魔法を発動する。まさかと思うけど……間に合って!今行くから!ユフェルナ!