「コワモテ男子に咲く花」
第1話 「距離 1メートル」
ーーーーーーーーー
高級マンションの最上階。
セキュリティは万全、なのに
そこに“更なる守り”が必要だった。
💛)…おはようございます、佐久間さん。
💛)岩本照です。
本日より、護衛を務めさせて頂きます。
低く、落ち着いた声。
黒のスーツに身を包んだ男は、
まるで影のように静かに、
だが確かな存在感を放って立っていた。
🩷)……ひっ
思わず、佐久間は小さく悲鳴を漏らした。
全身から漂う威圧感、鋭い目、
がっしりとした体格。
過去のトラウマが一瞬、脳裏に蘇る。
💛)……そんなに、怖がらないで下さい。
貴方には危害は与えませんから…
怖がられていることに気づいたのか、
岩本は一歩だけ距離を取る。
🩷)…そういう問題じゃないんだけどっ、
佐久間は小さく息を吐き、ソファに座る。
細身で中性的な顔立ち。
儚げな笑顔は、守られることに
慣れてしまった少年のそれだった。
🩷)護衛って言っても…ほんとに1日中、
俺の傍に居るわけ…?
💛)はい。佐久間さんの生活動線に
合わせて、最適な距離で行動します。
💛)基本、一メートル以内を保ちます。
🩷)い、1メートルっ……?!
🩷)近いっ…!近すぎるってっ!!
佐久間がわたわたと立ち上がるが、
岩本はびくともしない。
ただ、反応を観察しているようだった。
💛)……分かりました。
💛)ですが…いざという時、
即座に対応できる位置にはいますので。
敬語で、丁寧で、でも怖い。だけど――
(なんか、この人いい匂いする……)
佐久間の鼻先をふわりとくすぐる匂い。
見れば、岩本のポケットから顔を出す
コンビニのスイーツ袋。
🩷)……それ、クレープ?
💛)……!//
💛)…こ、これは…はい、クレープです。
勤務前に…買ってしまいました。
ちょっとだけ耳が赤くなっている。
そのギャップに、佐久間の中の”怖い”が
ほんの少しだけ解れた気がした。
🩷)……まさか、スイーツ男子?
💛)あ…甘いものは、好きです…//
素直な返答に、思わずくすりと笑った。
🩷)じゃあさ、今度おすすめ教えてよ!
💛)…かしこまりました。
💛)いくつかリストにして持参します…//
無表情の中に、口角が緩んだように見えた。
佐久間は気づかないふりをしたまま、
心の中で呟いた。
(…なんか、悪い人じゃないかも。)
1メートルの距離が
少しだけ縮まった気がした。
ーーーーーーーーー
コメント
9件
はちの作品まじで好きすぎる!!!!はちのやつ早く見たいってまじで思う!!いつも楽しい小説ありがとね!!これからもたくさんみる!!