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「ゔ…ぅえ」

「風柱様!呼吸を整えて下さい!すぐにお茶をご用意しますので少し待ってて下さいね!」


無惨戦を終え、ほとんどの隊士が重症として蝶屋敷に運ばれる。

柱である不死川も運ばれ、冨岡と同室になり早4日経った。

昼は平然を装えるが、夜になると怪我の痛みと同時に大切な弟や仲間を失ったことを思い出し、気分が悪くなる。

呼吸が乱れ、涙が出て、飯も喉に通らない。

「はい、薬です。苦いですが我慢してください」

「通らねェ…要らない、もう嫌だァ」

アオイに薬を用意されるも赤子に戻ったかのような口調で拒む。

「…夜中だ、他の隊士も寝ている。薬を飲んで落ち着け」

「うるせェ!!テメェに何が分かるッ!」

「俺はそんな話をしている訳ではない、早く寝ろと言っているんだ」

自分が苦しんでいる横で平然と読書をする冨岡に耐えられず不死川は痛みを感じながらも、刀を手に取り、冨岡に覆いかぶさった。

御館様も伊黒も悲鳴嶼も玄弥も居ない。

その事実を日が経つにつれ、思い知らされる。

こんなに辛い思いをするのなら、明日なんて来なければいいのに。

「なんで!なんでェ!俺が生きてんだァ!!」

その言葉を吐いた瞬間、ドタバタとしていた蝶屋敷の者もピタリと動きを止めた。

自分の失言に気づいた時には遅く、その場に居た冨岡以外の全員が悲しそうな顔をしている。

「俺ェ、なんで生きてんだァ…?殺してくれよ、なァ…もう、まともな暮らしなんて送れねェよォ…殺してくれ、冨岡ァ…」

自分の持っていた刀を冨岡に押付けた。

当然、受け取ることはない。

ただ下を向き泣きじゃくっている不死川を静かに見ているだけだった。

「”自分が死ねば良かったなんて二度と言うなよ、もし言ったらお前とはそれまでだ。友達をやめる”」

ようやっと口を開いたかと思えば、淡々と文を読むように言う。

いつもの口調ではないことに不死川は首を傾げた。

「昔、錆兎という友人に言われた言葉だ」

優しく不死川の背を擦りながら、冨岡は続けて話す。

「死を承知の上で弟も他の隊士も無惨戦に向かった。鬼を全滅させ、お前や俺、炭治郎達を生き残らせてくれた」

「ンなの…そんなん綺麗事だ」

「他の誰でもないお前が…お前の弟を冒涜するな。お前は絶対死ぬんじゃない。弟が命を懸けて繋いでくれた命を、託された未来を、お前も繋げ、不死川」

まるで自分に言い聞かせるようだった。

(そうか…こいつも)

冨岡も同じように何度も思ったことがあるのか。

今だって心の奥底では自分が死ねば良かったと思ってしまっているかもしれない。

それでもかつての友人が必死になって掛けてくれた言葉を反復し唱えてきた。

亡くなった人は消えてしまっても、想いは繋がり、決して消えることはない。

「お袋…、まさちかァ、胡蝶ォ、おや、かた様ァ、伊黒ォ、悲鳴嶼さ、ん…」

涙を拭うことなく冨岡に重心を預け、肩を借りてこれまで亡くなった者の名を喉を詰まらせ、嗚咽を吐きながらも呼んでいく。

「げんや…玄弥ぁ、いやだ、げんやぁ、寂しい…」

最後に残った弟の名を呼べば、國近の時でさえ我慢してきた気持ちが爆発した。

寂しい。

置いていかないでほしい。

冨岡の服の裾を掴み、必死になって縋る。

するとこれまで背を擦ることしかせず、相槌を打つこともなかった冨岡は同じように片手で裾を掴んだ。

肩が湿っていること気が付き、泣いていることを察する。

「と、みおかぁ」

「不死川、不死川、不死川…お前が生きていてくれて良かった、ありがとう…」

「…おれも」

2人は互いの名を何度も何度も呼び合い、朝になり声が枯れ、抱き合ったまま寝落ちた。

久しぶりに見た夢は弟や亡くなった隊士が出てくることはなく、ただ冨岡と縁側に座り、痴話喧嘩をする可愛げのない夢である。


それから冨岡に好意を抱くようになるまではそう時間は掛からず、気付けば一緒に街で食べ歩きをするような関係にまで発展していた。

「あ、オイ!何やってんだ冨岡ァ!」

「すまない。片腕ではどうも上手く皿を持つことが出来ず…」

店の皿を割ってしまった冨岡は不死川と店員に謝る。

器用に箸を使い、蝶屋敷でも別段変わった様子がないので忘れていたが冨岡は片腕を損傷していた。

これではこの先苦労するだろう。

「袖に米粒ついてんぞォ。ったく、テメェはホントに世話が焼けるなァ」

そう言って柔らかい笑みで袖を捲ってくれている不死川を冨岡はじっと見た。

純粋で、綺麗で、手放したくない。

「お前のような奴が身の世話をしてくれれば、いい生活を送れるのだろうか」

勝手に口が動き、自分の口を手で塞ぐ。

不死川は一瞬戸惑った表情を見せたがすぐに平然を取り戻し、意地の悪い顔をした。

「なァんだ、口説いてんのかァ?まァ、口説くにしちゃクソが滲み出てたがなァ」

どうやら冗談と受け取ったようである。

「一緒に住むか、冨岡」

「…は」

「うんとかすんとか言ったどうだァ」

どういうつもりか。

あの不死川が。

冗談を返されただけなのかもしれないと頭に過ぎるが、欲が出る。

「うん」

今はどんなズルい手を使ってもこの男が欲しい。

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