テラーノベル
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【 宝石 】
美しい色と輝きをもち、飾り物として尊ばれる鉱物。
***
この世界には、瞳に宝石を宿している人間がいる。その人間達の事はまだ良く知られていない。そのため、tesoro─瞳に宝石を宿した人間達の事をtesoroと言う─は実験などに使おうと攫われることがある。今分かっていることはtesoro達の片目が宝石の様に色がついており、きらきらと輝いているということと、能力を持っていることくらいだろうか。しかし、その片目を出していると攫われてしまうため、隠しているtesoroが多く、身近にtesoroが居ても気が付かない場合もあるそうだ。
***
「よし!」
ポニーテールを作った女子はふふん、と得意気に微笑んだ。気合いを入れて施したメイクもばっちり⋯ではなかったようだ。
「あっ⋯!カラコン!」
1番大事なことを忘れていた。彼女の赤く輝いている右目を隠すようにブラウンのカラーコンタクトをいれる。よし、今度こそばっちりだ。
「アリアー!セオドア君が来てるわよー!」
「あ!はーい!」
バッグを掴んで階段を駆け下りる。前の日に持ち物の準備をしていて良かった。1階に降りると、お母さんがドアを開けて待っていた。ドアの外には幼馴染のセオドア─通称セオがいる。きっとこの顔は遅刻だぞー!!って顔だ。
「アリア、3分遅刻だ。8時に噴水で待ち合わせだと言っただろ?」
「はいはい、ごめんなさい!さ、行くよ!」
ちぇ、3分なんて四捨五入すれば0分じゃん。でもどちらかといえば遅刻した私が悪いので、そんな文句は口に出さないでおこう。大人になったな、私!セオと並んでショッピングモールまで歩いていく。私も今日から社会人一年目。ショッピングモールに入っているアパレルショップで働くことになったのだ。何故セオも一緒かと言うと、セオも同じショッピングモールに入っている時計屋さんで働くことになったからだ。
⋯あ。
「セオ、止まって。」
目の前に植木鉢が落ちてくる。さっき私が視た未来と同じだ。
「嗚呼、ありがとう」
そう、アリアはtesoroだ。アリアの能力は未来予知で、未来が視える。さっきも植木鉢が落ちてくる未来が視えたそうだ。小学生の頃から能力を持っているけど、色々あってセオと両親にしか言ってないんだ。
そんな事より、もう少しでショッピングモールに着く。なんだかドキドキしてきた⋯!
***
セオドアと別れ、アリアは自分の働く職場である、アパレルショップ・Belloに入る。
「こんにちはー!」
「こんにちは。アリア・R・ルビィさんで合っているかしら?」
近くにいた明るい茶色の髪の女の店員さんが応えてくれた。取り敢えず無視されなくてよかったー!
「はい、合ってます!よろしくお願いします!」
「よろしくね。私は貴方のお世話係を担当するエマよ。」
エマさん!優しそうな人でよかった。アリアが安心していると、エマに声を掛けられた。
「さて、早速服を着替えてきて。仕事着は自分で買って貰うのだけれど⋯今回は特別に用意してあるわ。着替え終わったら仕事を教えるからね。」
つらつらと述べられ、おっと、もしかしたらビシバシ系かもしれない⋯なんてアリアは思ったのだった。
***
「はぁー、疲れた⋯!」
エマに主な仕事を教えて貰うと、あっという間に開店の時間になり、目まぐるしく動きまわっていた。やっと休憩時間になり、現在に至る。
「お疲れ様。これどうぞ、甘い物飲める?」
バックヤードにしゃがみ込んでスマホを覗いていると、上から声が降ってきた。上を見ると、声の主はエマだった。手にはミルクティーを持っている。
「ありがとうございます!ミルクティー大好きです!」
ぺこりとエマにお辞儀をし、ミルクティーを1口飲むと、 優しい甘さが口に広がる。
「1日目だものね。休憩時間中はゆっくり休んで。」
エマは小さく手を振り、去っていく。エマさん、本当は凄く優しい人なのかも⋯!ミルクティーを味わっていた。その時。
がしゃーん!!!
とんでもなく大きな音がして、外に出てみると、宝石店に泥棒が入ったようだった。周りのお客さん達はパニック状態の人やガタガタ震えている人、物陰から様子を伺っている人など様々なようだ。そんな中、宝石店から黒ずくめの男達が出てきて、セオドアが働く時計屋に入っていった。
「セオ!?」
アリアはセオドアが心配で、時計屋の方へ走っていった。エマの「アリアちゃん!」と言う制止の声が聞こえたような気がしたけど気にしない。2つ隣の時計屋をそっと覗くと、入口の近くにセオドアがいた。
「セオ、どーなってんの!?」
「アリア!?なんでここに居るんだ⋯。強盗が入ったらしい。俺が警察を呼んだから、警察が来るまで待つだけだ。」
ヒソヒソ声で話しかけると、セオドアは私がここに居る所為でちょっとびっくりした顔をしていた。しかし、すぐに冷静になって話す。いつもと同じでちょっと安心。
「え、押さえつけた方がいいのかな!?」
「駄目だ。お前が突っ走ってあいつらを刺激したら何が起こるか分からないだろ。」
確かに。頭が良いセオドアらしい答えが帰ってきた。ここで様子を見ようと思っていたが、Belloに強盗たちが入っていった。アリアの脳裏にエマが過ぎる。考えるよりも先に体が動いていて、走り出していた。
「おい!アリア!」
セオドアの声が聞こえた。でも振り返らない。だって振り返ったらセオドアが止めに来るに決まってるから。
「やめなさい!なにをしているの!?」
アリアが中を覗くと、ある黒ずくめの男とエマが言い合いをしている。他の男はボタンが宝石になっているブラウスを掴んでいた。
エマがブラウスを掴んで袋に入れようとしている男の腕を掴んだ。
「買うならお金を払いなさい!小学生でも分かることよ!?」
そう叫んでブラウスを取り返そうとするが、エマは男に突き倒されてしまった。咄嗟にアリアはエマに駆け寄る。
「エマさん!大丈夫ですか!?」
「ええ、でもあれはtesoroがモチーフになった限定物のブラウスなの⋯!」
そう。tesoroは神から能力を授けられた者として尊ばれるのだ。一部の人間からは実験に使おうとするが。
そんなことを考えていると、男2人組はBelloから走って逃げていった。
「ああもう!」
エマさんが悔しそうに床に拳を打ち付ける。きっととってもお洋服のことが好きなんだ。
「おい!離れろこのクソが!」
男の声がモール内に響いた。さっとそちらに目を向けると、強盗が茶髪の男の人の胸ぐらを掴んでいる。
「まあまあ。落ち着いて?深呼吸ー」
茶髪の男の人はえらくまったりしている。そのまま殴られて死ぬんじゃないかというほど。
「何言ってんだこの野郎!!!」
そう言って、強盗は茶髪の男の人に殴りかかろうとした─。
コメント
2件
ヤバい!めっちゃ面白い!! 続きめちゃくちゃ気になります!