テラーノベル
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音は外へ出なくなった。
彼はピアノの前に座るが、鍵盤に触れない。
触れれば、あの旋律が始まってしまう。
そして、それは必ず母を思い出させる。
「……弾けない」
指先が震える。
音楽は、彼にとって逃げ場だったはずだった。
だが今は違う。
どこへ行っても、同じ旋律に辿り着く。
夜、彼は一人で外に出る。
空には星。
あの日と同じように、無数に。
「なんで……消えないんだよ」
思わず声が漏れる。
何もかも変わったのに、星だけが変わらない。
それが、どうしようもなく苦しかった。
旋律は静かに続いている。
彼の中で、止まることなく。
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