テラーノベル
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仕事を終えて。
勇斗と仁人は、そのまま勇斗の家へ帰ってきた。
正確には。
勇斗と――大智の姿をした仁人。
この状況だけで、かなり違和感があった。
自分の家のソファに大智が座っている。
大智が勝手に冷蔵庫を開ける。
大智が「何か飲む?」と聞いてくる。
どう見ても。
大智。
けれど。
不思議なもので。
数日間、一緒にいればそれなりに慣れる。
「勇斗、これ飲んでいい?」
「いいよ」
「ほんと?」
「仁人が買ったやつじゃん」
「そうだけど」
冷蔵庫から飲み物を取り出す姿を見ながら。
勇斗はもう、ほとんど違和感を覚えなかった。
見た目は大智でも。
喋り方も。
仕草も。
ちょっとした間の取り方も。
中身は仁人。
それが分かるようになってきた。
「何?」
戻ってきた仁人が、勇斗の視線に気づく。
「いや」
「さっきから見てるじゃん」
「慣れたなと思って」
「何に?」
「大智の仁人」
「変な呼び方すんな」
「だって大智の仁人じゃん」
仁人は勇斗の隣に座る。
大智が隣にいる。
そんな感覚が先に来ていたのに。
今はもう違う。
自然に肩が触れる。
仁人がスマホを見ながら、勇斗にもたれかかる。
それにも何も思わない。
むしろ。
「疲れた?」
「疲れた」
「今日大変だったもんね」
「誰のせいだよ」
「俺?」
「勇斗とくっつくたび、大智が引き剥がしに来るから」
「あれは俺のせいじゃないでしょ」
思い出して笑ってしまう。
仁人も小さく笑った。
「嫉妬だと思われてたし」
「大智、めちゃくちゃ嫌がってたね」
「自分の身体でイチャイチャすんなって」
「じゃあ今、大智が見たら怒るかな」
「いないからいいじゃん」
「確かに」
また二人で笑う。
その空気が。
いつの間にか、いつもの二人に戻っていた。
仁人がいる。
隣にいる。
それだけでいい。
見た目なんて。
もう関係ないのかもしれない。
「…………」
勇斗は、隣の仁人を見る。
仁人も気づいて、勇斗を見る。
「何?」
「別に」
「またそれ」
「仁人だなと思って」
「だから仁人だって」
少し呆れた声。
大智の声なんだけど。
それすら愛しく感じる。
勇斗は自然に手を伸ばした。
頬に触れる。
「……何」
仁人は逃げなかった。
目が合う。
さっきまで笑っていた空気が。
少しだけ変わる。
勇斗は仁人の頬を撫でながら。
そのまま、ゆっくりと身体を傾ける。
仁人の肩に手を添えて。
ソファへ倒すように、そっと押した。
仁人も抵抗せず。
勇斗を見上げる。
中身は仁人。
間違いなく。
好きな人。
恋人。
だから。
自然に顔を近づけた。
仁人も目を閉じる。
あと少し。
その瞬間。
「…………」
勇人の動きが止まった。
「…………」
仁人も待っている。
勇斗は。
目の前の顔を見た。
「…………待って」
仁人が目を開ける。
「何?」
「…………」
勇斗はもう一度見る。
顔。
「…………」
大智。
「…………無理」
「は?」
勇斗が勢いよく離れた。
「無理無理無理!」
「何!?」
仁人が驚いて身体を起こす。
「ごめん、無理!」
「何が!?」
「大智!」
「は!?」
勇斗は仁人の顔を指差す。
「大智じゃん!」
「仁人だよ!」
「中身はね!」
「今さら!?」
「いや、俺も今まで大丈夫だったんだよ!」
本当にそうなのだ。
普通に隣に座れた。
くっつけた。
頬にも触れた。
愛しいとも思った。
なのに。
キスする直前。
突然。
脳が理解した。
これは大智の顔だ。
「……無理だ」
「失礼すぎない?」
「仁人が嫌なんじゃない!」
「分かってるよ!」
「でもこの顔にキスするのは無理!」
「この顔って言うな!」
仁人もさすがに笑い始める。
「さっきまで普通だったじゃん」
「俺もいけると思った」
「何が?」
「中身が仁人なら見た目なんて関係ないのかなって」
「うん」
「関係あった」
「最低」
「だって大智だもん!」
「大智に謝れよ」
「なんで!?」
勇斗は頭を抱えた。
おかしい。
さっきまで。
本当に仁人にしか見えていなかった。
なのに。
唇が近づいた瞬間。
急に大智が現れた。
いや。
最初から大智なのだが。
「……大智とキスするところだった」
「キスされるの俺なんだけど」
「でも、顔は大智」
「しつこい!」
仁人に叩かれた。
「痛っ!」
「もういい。キスしない」
仁人が拗ねたように離れる。
「待って」
勇斗はすぐにその腕を掴んだ。
「何」
「それは嫌」
「できないんでしょ?」
「…………」
見る。
やっぱり。
大智。
「…………」
「何だよ」
「……早く戻って」
「俺に言うな!」
仁人が吹き出した。
勇斗も笑う。
そのまま仁人の肩を引き寄せた。
キスは。
今日は諦める。
でも。
抱きしめるくらいなら。
「これは平気」
「何その基準」
「分かんない」
「きしょ」
そう言いながら。
仁人も離れなかった。
勇斗は腕の中の恋人を見る。
中身は間違いなく仁人。
愛しい。
大好き。
だけど。
顔は。
「……大智なんだよなぁ」
「うるせえ!」
頭を叩かれた。
#ざつだぁぁぁぁあん!!
パグモチ
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七星そら
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コメント
5件
めちゃくちゃ面白いですwww😂 大好きですwww
1話目からめちゃくちゃ好きで追ってます。きっとだいちゃんはだいちゃんで自分の体で2人きりにさせてる間ハラハラしてるんだろうな…と笑ってまいました笑
第3話、めちゃくちゃ面白かったです!「中身は仁人なのに顔は大智」問題、キスの直前で急に無理になるの、めっちゃ分かります(笑)。設定の皮肉が効いてて、笑いながらも「ああ確かにそうだよな」って納得させられました。でも抱きしめるのは平気っていう基準もまた絶妙で、二人の関係性がしっかり見えた気がします。仁人の「うるせえ!」で叩くところも、変わりつつある日常の中のいつもの空気感が伝わってきて、ほっこりしました。