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「わぁ~・・・・」
百合のキャバ嬢最後のアルバイトの日、和樹は花束を持って迎えにきた、百合は感動してその花束を受け取り、彼に抱き付いた、そしてそのまま着替えを持ってしばらく和樹の家に世話になるために、今初めて彼の住む六麓荘の葦翠館に足を踏み入れた
彼女は目を見開いて眺めまわしていた
玄関ホールは、まるでヨーロッパの宮殿を思わせる威容で、床は思わず土足では入り辛いイタリア産の大理石だった、淡いクリーム色に繊細なグレーの縞模様が走り、光を反射して大理石の床が柔らかな輝きを放っている
中央には、直径3メートルを超えるシャンデリアが天井から吊り下げられ、クリスタルの無数のカット面が光を乱反射し、虹色のきらめきを空間に散らす
さらに壁面には、17世紀のフランドル派の巨匠による油彩画や、現代アーティストの抽象画が計算された配置で飾られ、歴史と現代の対話を感じさせる・・・
百合がじっと絵画を眺めていると和樹が自嘲気味に言った
「ああ・・・それは父の趣味なんだ、変人なんでね、なんかこういう芸術品を集めるの好きなんだ」
和樹が照れくさそうに笑って言った、さらにリビングとダイニングルームはグランドサロンに隣接し、5メートルの長さを持つマホガニーのダイニングテーブルが中央に据えられ、貴族の食卓の様に重厚な椅子が並べられている
テーブルの表面は鏡面仕上げで、置かれている燭台や銀食器は照明の光を反射して、一段とダイニングが明るく見えた
部屋の一角には、特注のワインセラーがガラス張りの壁に埋め込まれ、ボルドーやトスカーナのヴィンテージワインが整然と並ぶ、使用人たちが給仕する際の動線を考慮し、隠し扉が壁に巧妙に仕込まれているのも百合を驚かせた
「こんな・・・大きなお屋敷に・・・今はたった三人で?」
百合は言った、和樹は肩をすくめた
「使用人を入れれば8人かな?庭師と妹の家政婦と家庭教師、あと色々・・・」
不安そうにしている百合の肩を抱いて和樹が言う
「心配しなくていいよ、僕の部屋は二階の一番端だし、小さなキッチンとバスルームもあるから君が嫌なら使用人達と顔を合わせないで済むよ」
「あ・・・あなたはとんだ御曹司だわ・・・」
百合はとてもじゃないがあっけにとられて和樹を見た、ブスッと和樹が顔を歪める
「そんなの全部親父の力だから、御曹司とか言われてもちっとも嬉しくはないよ、さぁ!僕の部屋へ行こう」