みんな食べ終わって飲み物を飲んで休憩。
いつになく、蒼くんと雪くんの真剣な表情。
蒼「どこから話す?」
雪「全部やろ」
蒼「じゃあまず、ごめん。樋口さんの悪い噂って言うのは嘘なんだ」
え?どういうこと?
蒼「…あの時は話すつもりはなかったから噂に留めておいたけど、俺らの…」
蒼くんが口籠る。
すると雪くんが口を開いた。
雪「なぁ、はるちゃん夕海ちゃん。2人は兄弟とかいとことかおる?」
夕「私はひとりっ子だよ。いとこは遠くの県にいるよ」
は「私は小2の妹がいる、柚菜っていうんだ」
雪「かわいい名前やね」
雪くんは優しく微笑む。
だが、雪くんの顔からすぐにすぐに微笑みは消えた。
蒼「俺らにはいとこがいた。去年まで」
え?
蒼「俺らと同じ歳のいとこだった。名前は東条琴」
知らない名前。
雪「でもな、去年亡くなったんよ」
真剣な眼差しの雪くん。
雪くんの視線は自分の胸元のネックレスに。
そのネックレスには小さな三角形のチャームがついていた。
雪「….死因は」
蒼「樋口楓によるいじめ」
まず、頭に衝撃が走った。
鈍器で殴られたような。
きっと 夕海の顔も、私の顔も、驚きに満ちた顔だろう。
蒼くんが静かに左耳のピアスを触る。
蒼「俺のこのピアスと、雪のネックレスは、琴からもらった形見、みたいなものなんだ」
雪「亡くなる前の僕らの誕生日に琴がくれたんだ。つまり、琴が亡くなる前の最後の贈り物やった」
蒼くんからいじめの内容を聞かされた。
それはもう想像を絶するものだった。
蒼「いじめの原因は妬み。アイツ、お嬢様口調だろ?分かると思うけど、実家太いんだよ。だから自然とクラスのリーダーになったらしい。
琴はなんでもできた。容姿も良かったし、人望もあった。琴の周りには人がいた…らしい。
でも、なんでも抱えるやつだった。
いじめの内容は、無視から始まり、だんだんエスカレート。強姦、暴行、犯罪強要。最後は樋口楓に金をもらった奴らが琴を順番に…輪姦、して…」
俯いて言葉に詰まる蒼くん。
その表情はよく見えないが、悔しそうな、悲しそうな表情。
雪「でも、僕たちは何も知らんかった。僕たちは関西にいたから。遠い僕たちが何ができるかはわからんかったけど、何も話してくれんかった。知りようがなかった。琴は、僕らに心配かけたくなかったんやと思う」
蒼くんは苦しそうだけど、雪くんは説明文を読むかのようにハキハキと喋る。
絶対苦しいはずなのに。
雪くんも表情は曇ったまま。
自分がされたわけじゃないのに、話を聞くだけで視界がぼやけて、歪んでくる。
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