ドオッ!
「ブラック!下がれ!」
風夜がブラックを後ろに下げ、対抗するかのように突風をぶつける。しかしその風に煽られて風夜は壁に叩き付けられた。しかし、同等の力だったのか闇風夜もまた壁に叩き付けられたようだ。痛みに耐えて風夜はすぐに体勢を立て直し床を蹴る。振りかぶる拳に風の力が加わる。
「おらぁっ!」
容赦なく闇風夜の顔に拳を叩き込み、追い討ちをかけるように爆風が巻き起こる。風夜はその自分が起こした風をバックステップで回避し、ブラックの元まで下がる。
「消し飛んだか?」
しかし予想に反して今度は闇風夜がお返しと言わんばかりに拳を振りかぶって突進して来た。流石に予想外だった風夜は咄嗟に腕をクロスして受け止めるが、腕から鈍い音が聞こえた。
「くっ……」
(腕の骨がやられたか……)
腕に響く痛みを無視して風夜は目の前の闇風夜を睨み付ける。相手も相手で手が痛いはずだが闇風夜は痛みなど感じていないように立っている。
(まあ、そりゃそうだよな……あいつ闇の具現化みたいなやつだし、攻撃が当たるだけマシなのかもな)
「でも、僕もここで倒れるわけにはいかない。僕はここで自分に勝ってやるんだ」
風夜は再び地面を蹴る。もう左腕は使い物にならない。右手で顔面に拳を叩き込み、そのまま馬乗りになってタコ殴りにする。
ガスガスガス……
「う……わぁ……」
後ろからドン引きの声が聞こえたが今は気にしてる場合では無い。闇風夜をどうにかしない事にはナイトメアを追う事も出来ない。当のナイトメアは余程の自信があるのか、いつでも撤退出来るようにワープゲートを開いたまま風夜と闇風夜の決闘を眺めている。
(あいつ……この闇の奴ぶっ倒したら顔面に一発入れないと気がすまねぇ……!)
風夜はナイトメアにそう毒づきながら、闇風夜への攻撃の手は緩めない。
「……それを破壊する事は出来ませんよ」
不意にナイトメアがそう言った。
「それは闇の具現化。貴方自身の中にある闇が貴方の姿と能力を借りて具現化したものに過ぎません」
風夜は攻撃の手を止めた。
「貴方が負の感情を捨て去れば、それは消えますが……」
風夜の顎を持ち上げる。
「当然、貴方には出来ませんよね?自分と同じ顔をしたものですら容赦なく殴るんですから」
「攻撃しても攻撃しても消えないのはそれが原因です。と言うより攻撃すればするほど強くなりますよ」
風夜は顔を歪める。攻撃する事が相手を強くするのなら無駄な攻撃は禁物だ。ナイトメアは揺さぶりをかけるように言葉を続ける。
「攻撃すると言う事は少なからず負の感情を持つのでしょう。そしてその闇は負の感情を糧として強くなります」
ならば正の感情を抱けば良い話なのだが、この状況で正の感情を持てと言う方が難しい。風夜は扇を握った手を下ろしたままブルブルと震える。
「風夜、ここは一旦引きましょう。どうしようもありません」
ブラックは風夜の腕を掴んで引く。
「……無理……無理だよ……僕はあいつを倒さないと……じゃないと……!」
風夜の周りに闇のエネルギーが満ちる。その大半は闇風夜へと向かい取り込まれて行く。
「ダメです!このままでは相手を強くするばかりです!だから一旦……」
「嫌だ!そんなに戻りたいならブラックだけで戻ればいいだろ!」
風夜はブラックの手を振り払い、闇風夜に突っ込んで行く。
「……無謀すぎます……!」
ドオッ!
再び爆風が巻き起こり、風夜がブラックの横をもの凄い速度で吹き飛ばされて行った。
ドガンッ!
背後の壁に激突した音が聞こえ、ブラックは振り返る。そこには風夜が半ば瓦礫に埋まるようにして倒れて、意識を失っていた。
「……風夜!」
ゾクッ
背後に寒気を感じ再び前を向くと……
____闇風夜がブラックも吹き飛ばさんと
扇を構えていた____
コメント
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わ…闇風夜の顔に風夜がパンチしてる!私だったら同じ顔の奴は殴る時躊躇しちゃうかも…まぁ殴るのに変わりはないけど! てか風夜大丈夫?!やられてない?!ブラックにげて!
ンンンんンンン!!ブラック!逃げろ!死ぬぞ!