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#執着
さぶれ
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あおい
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ruruha
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46
*―それから3日後
金矢金融事務所―
あれからまだ竜一の謹慎は続いていた。恐らく1週間は続くだろう…
塁はこの日、回らなければいけない回収先を確認し、事務所を出ようとしていた時だった…
“プルルル…”
“プルルル…”
事務所の固定電話が鳴った…
席を立ったタイミングで鳴った電話に塁はそのままの姿勢で手を伸ばし受話器を取った。
“カチャッ”
「はい、金矢金融事務所。」
低い声でその電話に出た。
「あ…もしもし、米原ですけど…。」
……桜子だった。
「あぁ……、あんたか。 で、全額返済の目処でも立ったんか?」
前置きも世間話もなしで ぶっきらぼうに事務的な内容だけを直球で放り投げる塁。
桜子の返答まで少し間があった…
………。
「………もちろん。残りのお金の支払い準備は出来てる。でも……ちょっと忙しくて…出来たらそっちから取りに来てもらわれへんかな……?」
“こっちから取りにいく…?”
疑問に思いながらも塁は返事をした…
「……ふっ、まぁええ、どこに取りにいったらええんや?」
「………今日の19時に難波のコンラッドホテルの一階ロビーに来てもらえる?」
「あぁ、19時にコンラッドホテルやな。分かった、ほな……」
「あの! それと…!!」
電話を切ろうとする塁を必死に引き留めた桜子。何か様子が変だった。
その声の様子に塁は一瞬、目を細めた。
「……なんや。」
「その……出来たら塁… 一人で来てほしいんやけど…。」
その謎の要求に塁の目元がピクリと動いた。怪しく思いながらもその理由を聞いたところで、桜子が正直に話すとは思えない。その要求を飲む…というか、今は舎弟の竜一を休ませている事もあって、どっちみち飲まざるを得ない状態だ。
「今、竜一の事休ませとるから、始めからわし一人で行くつもりや。」
「え?!そ、そうなんや… そ、そしたらまた後で…」
「…おう。」
カチャ…。
そう言って電話を切った。
桜子のおかしな注文に疑問を抱きながらも塁はふっと鼻で笑った。
「ふっ…魂胆ありそうやな。」
そうつぶやいた塁だったが、正直、お金さえ返して貰えれば桜子が何を企んでいようがどうでもよかった。 それに桜子の企むことくらい知れている、軽くあしらえるだろうという自信もあった。
一方の桜子は電話をかけ終わると部屋のベットに倒れ込むように寝そべった。
「はぁ…なんで塁に電話するだけでこんな緊張するんよ…。」
ため息をつきながら小言をつぶやく。
15年前”また明日会おう”と言ったあの約束。 予期せぬ事情があったにせよ裏切ってしまった。 だが何の因果か不本意な形ではあったもののやっと再会できた。
その上、塁は桜子の事を覚えていた
あの日からお互いに壮絶な日々を乗り越えて… 。
運命なんて言葉信じる柄じゃない…
でも桜子にとって塁はやっぱり特別な存在だと改めて感じていたのだ。
「お前はあかんことなんかない。」
辛い時、塁の姿と共に あの言葉を繰り返し思い出した。 だから今夜は…
桜子は静かに決意を固めた。
数時間後………
19時 コンラッドホテル
塁は時間きっちりにホテルへ到着した。
ホテルのボーイが入り口扉横に立ち和やかな笑顔で扉を開けた。
扉を抜けるとシャンデリアがぶら下がる煌びやかなエントランスロビーが広がっている。
塁が足を進めるとホテルのロビーに置かれたソファーに桜子が落ち着かない様子で腰掛けているのが見えた。
そこへ近づいてくる足音…
桜子が視線を少しあげたその先にはこちらへ近付いてくる塁の姿があった。
約束通りちょうど19時。
桜子は慌ててソファーから腰を上げた。
「塁…約束通りやな。
わざわざ来てもらってありがとう。」
「そっちこそ約束通りやな。ガキの頃みたいにまた姿現さへんと思ったで。 」
桜子に顔を合わせるや否や茶化すように言った塁。
「あの時の事はごめんってば…。 ほんまに根に持つタイプやな塁……。」
「だからこの仕事が勤まるんや。 今回はちゃんと銭用意出来てんな?」
「もちろん用意してる、でも…」
「でも…何や?。」
「こんな人目につくロビーでお金渡すのは嫌やと思って、部屋取ってあるからそこで渡しても……いい?」
そう提案した桜子。
その提案に塁は一瞬固まった… そして、少しばかり巡透して口を開いた
「ええやろ…言うとくけど変な事企んでも無駄やからな。」
「……別になんも企んでない。怪しいなら調べてもらってもいい…。」
「はぁ…。まあええやろ。 その部屋まで案内してくれるか。」
その言葉を聞いて桜子の体から力が抜けた…
「ありがとう。ついてきて。」
正直、まだ塁は疑っていた、が…ここで断ってもまた事がややこしくなる。金を受け取って帰る。その事だけのために承諾したのだ…。
コツコツコツ
ピンポーン…
2人が大理石の床を踏む音が重なる……
エレベーターに乗り込み桜子が取ってある部屋の階へと向かった。
少し距離を取り、何を話すわけでもなく…
ピーンポーン…
ガラ…
エレベーターの扉が開き2人は廊下を進んでいく。
「ここが私の部屋。 これ、カードキー。」
疑いを晴らすため、先に部屋の中を確認してもらおうと桜子は塁にカードキーを差し出した。
「…はよ鍵開けてくれるか。」
「部屋の中、先に入って確認とかせんでええの?」
「……そんなもん必要ない。」
塁は早く開けろとばかりに顎で扉の方を指し示した
「そ、そう。じゃあ…。」
ピピーー カチ
ガチャっ
桜子は部屋の鍵を開け、塁を中へ案内した…
「どうぞ入って。 」
「……。」
サッサ…
2人は部屋の中へ入った…
グレードの高い部屋…
その広さから恐らくスイートルームだろう事が分かる…
“何故、こんな広い部屋をわざわざ…
仕事で泊まっとったんか?”
桜子のホステスという仕事を思えば考えられなくもない… そんな疑問を抱きながらも、おもむろに ソファーに腰掛けた塁はさっそく煙草に火をつけた。
「ここ…禁煙部屋ちゃうな?」
その様子から特に自分の事を疑っているわけではなさそうと、少し緊張がほぐれた桜子であった。
「あ…うん…。大丈夫。」
そう言って、自分もゆっくり塁の迎えにあるソファーに腰掛けた。
「ふぅーー…。 ほな、残りの260万さっそく渡してもらおか。」
煙草をふかしながら険しい表情で早速お金を催促する塁。
「は、はい…これが残りのお金。」
桜子は慌てて用意していたお金を差し出した。
「よし……。」
ガサッ
シャッシャッシャ…
受け取ると封筒に入ったお金を取り出し、慣れた手つきで数えていく塁……。
“お願い…1秒でも長く…
2人きりのこの時間が続いてほしい…。”
そう願う桜子にはお札を手際よく数える塁の手つきがとても意地悪に見えた。
シャシャシャ………
「…確かに260万。 これで借金は全額返済や。 ま、正しくはあんたの後輩の借金やけどな。」
「私もほんまにアホやわ…。 ムキになって他人の借金肩代わりするとか…。」
「銭さえ返してもろたら、他のことはワシには関係あらへん。他人の借金肩代わりするって決めたんもあんたの勝手や。」
「………分かってる。でも…、あの子が塁とこから借金してたからこうやって再会できたと思ったら…。 私、借金肩代わりした事、全然損したなんて思ってないねん。」
その言葉に塁の手がピクリと僅かに震えた…。この女は何を言っているのか……他人の借金を肩代わりするなんぞ、損しか無い話だ。
「……………。」
桜子からの思わぬ言葉に、黙り込んだ塁。その言葉をどう受け止めてどう答えていいのか全く分からなかった。
しばらくの沈黙…。
「……あ!わざわざ来てもらったし、ルームサービスでも頼むわ!お酒がいい?」
「いや……。銭はきっちり返してもろたからそれでええ。これで帰らしてもらう。ほな。」
サッ…
気まずい空気になったこの部屋を早く出ようと、塁はソファーから腰を上げた。
「…………。」
桜子の心にはまた言い様のない寂しさがこみ上げてきた。
“こうやってやっと会えたのに…
また…会えへんくなるわけ…?
このお金払っただけで終わり……?
そんなん…”
「… ま、待って……!」
桜子は何かに駆り立てられるように塁を呼び止めた。
「………っなんや。もう用は済んだやろ。」
「…済んでない…。」
「なんやて………?」
塁は桜子の方に少しだけ体を向けそう答えた。
「全然……済んでないわ……。 なんで……今日この部屋取ったと思うう……?。」
………
「そんなもん知らん…… 。お前が勝手にやったことやろ……。」
「私…、15年前に塁とした約束がどうしても忘れられへんくて…。また会えるかもしれへんと思って大阪に帰ってきてん。それでこうやってやっと塁と会えたのに…。これで終わりやなんてそんなん嫌…絶対…嫌や…。」
塁は桜子の言葉に体が固まった…。
“自分と会うために……大阪に……”
その言葉に塁の心の中に築いた要塞が僅かに軋んだ……
「わしはただの金貸しやぞ………。 これ以上わしと一緒におっても……何の得にもならん。」
「得とか損とかそんなんと違う。 塁の言葉は信じられるから いつも本当の事言ってくれるから…。 」
「本当て……。 わしは思った事を言うとるだけや。」
「だから信じられるねん。」
「は……?」
「綺麗で…その場しのぎの甘い言葉囁いて良い人ぶる人間なんて今まで腐る程見てきた。 人の醜いところ…夜の仕事やってたら嫌というほど分かる……。そういう人間ほど、いざ自分の立場が危うくなると言い訳して逃げ出すようなずるい奴ばっかりやった…。」
塁はその言葉に不敵な笑みを浮かべて言葉を返した
「ふっ…。わしはそういう奴らと違う言うんか?そうやとしたら、わしの事、買いかぶり過ぎや。」
「そんなこと…。」
「わしかて銭のためやったらどんなことでもする。銭のためやったら平気で女ソープに叩き売る、人の体の事なんかどうも思っとらん。お前が言うてた通りちっさい男や。」
「そんなことない… お金のためじゃないやろ…?」
「何言うてんねん。 わしは銭のために生きとる人間や。」
「違うやろ…。お金で自分の私利私欲を肥やすためだけやったら、端から他人に自分のお金貸す必要なんてない…。 楽して甘い汁吸おうとする人間は一回地獄見な自分の強欲さに気付かれへん。塁は…そういう人らにお金を返さすことで…人間として当たり前の道理を教えてるんやろ?自分が最後の砦になって……お金のせいで亡くなった家族と同じようになる人達を少しでも減らすために…。」
……!?
何故、桜子が自分の家族の不幸を知っているのか、桜子のその言葉に思わずたじろいだ塁…。
今までこんな言葉を塁に投げかけてくる人間はいなかった。
大抵は”鬼”やら”悪魔”と恐れられ人から怖がられ、関わることを避けられる……… そして、塁自身もそれでいいと思っていた…そういう存在として生きていくと…。
なのに目の前のこの女はなんだ…。
借金を肩代わりしたうえに…こんな自分に会いたいと大阪に帰ってきた…。
塁は今まで見たことのない生物と接しているような気持ちになった…
「あ、アホか…!わしはそんな善良な人間やない。 …わしも他に仕事がある…そろそろ帰らせてもらうで……」
そう言って、逃げるように部屋を出ていこうと桜子に背を向けた塁。
“嫌… 絶対に離れたくない…”
桜子の思いがついに溢れ出した……
「いや!お願い待って!」
ギュッ!
「な…………!?」
桜子は部屋を出ていこうとする塁の腕を思わず掴んでいた。
“どうしても離れたくない…
これで終わりなんかにしたくない…
もう二度と会われへんと思うと怖くてたまらない…。”
桜子の率直な気持ちが体を突き動かした。
「お願い行かんといて…。」
「離せ。」
「嫌や………。」
「ちっ…。お前はほんまガキの頃から頑固やのう…。」
「塁の方こそ頑固やんか…。」
「………。何が望みや。」
「だから、塁の側にいたい…それだけ。」
塁はその言葉を聞いて少し俯いた…
「………それは無理な話や。」
「なんで…?」
「…………わしは銭にしか興味無いんや。 金貸しが女と一緒になったらお互い身を滅ぼす。それが金貸しの世界でのルール、習わしや。これで分かったやろ?…離さんかい。」
「………そしたら私に………
1000万貸して。」
塁は一瞬、目を見開いた。
桜子の思惑など簡単にあしらえると思っていたが、自分の読みが間違っていた…と、心の中で苦虫を噛み潰したように呟いた…。
「………お前……ええ加減にせえよ。」
桜子は懇願するように塁にその体を近付けた。
「だって!お金だけが塁との繋がりなんやろ?ほな私に今すぐ1000万貸してよ!」
どうしても塁と繋がっていたくてやけくそになる桜子。
後退りこれ以上近づくなとばかりに桜子との距離を離す塁…
往生際の悪い桜子を塁は鋭い眼差しで睨みつけ低い声で怒鳴った…
「ドアホ!担保も無しにそんなもん貸せる訳ないやろ!」
その言葉に桜子は少したじろいで…俯いた…そして 少し間を空けて桜子が何か覚悟したように言葉を返す
「担保はある…。」
「ふっ…。その担保はどこにあるんや。証拠見せてもらおか。」
……塁は口だけで信用出来るかとばかりに桜子の主張に半ば呆れたように反論した。
俯けていた顔をゆっくりと上げ塁の目を見つめながら桜子は口を開く…
「担保は私の体や…。」
塁の体が固まった。
「お前…自分が何言うとるか……分かっとんのか……。」
「さっき塁、人の体の事なんかどうも思ってないって言ってたやん…。 だから、担保は私の体。借金払われへんくなったら、生命保険かけるなり、私の体どっか売るなり、塁の好きなようにして……。」
塁の目つきが変わった。
地を這うような低い声で…
「…わしは貸す必要のない相手に銭は出さんのや………なんでそこまでわしにこだわるねん………。」
「…………好きやから………。
塁の事が好きやから…。それだけ!」
形は歪だが、桜子の塁への紛れもない素直な気持ちだった。
“好き”桜子の口から発せられたその言葉が塁の心の底を抉った……。
いつもの無表情が少し歪む……
「………さっきも言うたやろ。金貸しは女と一緒にならへんのや…。」
桜子の気持ちを突っぱね続ける塁。
小学生の頃と同じだった……
「それやったら…今夜だけでいい………それ以上望まんから…………。」
少し間を置いて…桜子が拳を握りながら潤んだ瞳で塁に訴えた…
「私の事………抱いて…?」
………………!?
「お前………今…何言うた…。」
コメント
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みぅです🤍🥀 第6話、一気に二人の距離が縮まった感じがしてドキドキした…!特に桜子が「好きやから」って叫んだシーン、めっちゃ切なくて、でもまっすぐで、胸がギュッてなったよ。塁が逃げようとするところも、金貸しとしてのルールと自分の気持ちの間で揺れてるのが伝わってきて…。最後の「抱いて?」には息止まった。続きが気になりすぎる〜!らむらむさんのキャラの心情描写、すごく丁寧で引き込まれます🌙