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第8話:名前を売った男
リュウは大学4年、髪を後ろに流し、シャツの袖を無造作にまくっていた。
友人に言わせれば「就活モード」、でも本人はもう内定を得て気が抜けていた。
その日の昼、サークル仲間からある話を聞く。
「高スコアのNaPoint名義、売れるらしいよ。たぶん十万は固い」
冗談だと思った。
でも夜になって、試しにダークウェブの一角を覗いてみた。
《スコア付き/“信頼レビュー主”/名義譲渡OK》
リュウのアカウントも載っていた。
“売れる側”だった。
翌週、売った。現金化も済んだ。
1か月後、内定先から「選考辞退と伺いました」とメール。
え?出してないのに。
マイページは「ログイン情報が存在しません」。
その週、母からのLINE。
「区役所で戸籍謄本とれなかったんだけど、なんか知ってる?」
家のWi-Fiが急に繋がらなくなり、銀行アプリも本人確認が弾かれるようになる。
──本人って、なんだっけ。
そう思いながら、リュウは久しぶりにNaPointを開く。
そこには、まだ自分の顔写真。
でも名前は見覚えのないものに変わっていた。
「この人、信頼レビュー主です」
評価:4.9/5
ログイン時間:18時間/日
画面の奥で、誰かが“彼”を使っていた。