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「……書き手は、自分をこの世界の『マスター』であり『創造神』だと定義しているのかもしれません」
「…なるほどね」
あの紙切れにはまだまだ謎が多い。
だが少なくとも、私たちが追っている「父」という存在が関わっていて、その人物が常軌を逸した思想を持っていることは確定的になった。
沈黙が、重く部屋を支配した。
窓の外では雨脚が弱まり、遠くでスラムの濁流が流れる音だけが聞こえる。
「……ともかく。この紙切れの内容が本当なら、明日はもっとコロナリータに踏み込んで話を聞かないと」
「彼女が何を知っていて、何を隠しているのか。あるいは、何を『植え付けられている』のか」
私に続くようにアルベルトが冷たく言い放つと、ダイキリは納得のいかないとでも言うような
恐怖を必死に抑え込もうとする表情で小さく頷いた。
「……整理はできました、けど。でも、やっぱり……ちょっと、怖くなってきちゃいました。私、おもちゃになんてなりたくない……」
その小さな呟きは、暗い部屋の中で重く響いた。
私は少しだけ、彼女の緊張を解こうとして笑ってみせた。
「もう、そんなにビビらなくても大丈夫よ。私がついているでしょ」
だが、ダイキリは見たこともないような焦燥に満ちた顔で私を凝視した。
「お二人は、ここに名前を書かれていないから…そんな余裕でいられるんですよね!?私は……お母さんをあんな風に壊されたのに、次は自分の番かもしれないって……! その不安が、お二人には分からないんですよ!!」
「……っ、」
言葉に詰まった私に代わり、アルベルトが静かに口を開いた。
「……なら、用心しましょう。敵はまだ、特等席でグラスを傾けているだけで、舞台は既に整っているかもしれません。私たちがすべきなのは、そのレシピをぶち壊すことだけです」
「……ダイキリ。励まそうとしたつもりだったけれど、無責任に聞こえたなら謝るわ」
私の謝罪に、ダイキリはハッとして、震える手で顔を覆った。
「……っ、あ、いや、こちらこそ……取り乱してしまって。ごめんなさい、エカテリーナさん、アルベルトさん」
だが、彼女の指先は、止まることなく震え続けていた。
(この子には、私のような、地獄の底から這い上がってきたような殺意はない。彼女はただ、普通の少女として、普通に生きたかっただけなのかもしれない……)