テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
rd視点
出会いは正直覚えていない。
でも、一方的には知っていた。
耳に残る低音ボイス。男なのに女っぽい見た目の立ち絵。印象に残るには十分だ。
なんとなく喋って、なんとなくコラボして、なんとなくプライベートでも会うようになって。
そう、なんとなく。本当に気の合う友人。
だと、思ってた。
それが、どうしてこうなったんだろうか。
「あの、なるせ…」
「うん」
「いや、うん。じゃなくて」
俺はどうしてこの男に押し倒されているのか。
面前には少し長いまつ毛、大きな瞳、綺麗な肌、本当に男かと錯覚しそうな端正な顔立ち。
「どいてくれ」
「それはちょっと」
「なんでだよ!」
「うーん…なんとなく」
今日は予定がなくゆっくりしてたが、あまりにも暇と感じたので、なんとなくなるせに連絡したら同じく暇をしていた所だと。
何度かお邪魔したことあるなるせの家に遊びにきて、近況報告だったりゲームの話だったり他愛もない話で盛り上がってたはず。
押し倒される状況なんてなかった。
「俺さ。お前のこと好きかも」
「…..は?」
何言ってんだ。お前は男で俺も男で。
突然の告白にも関わらず、案外冷静に思考を巡らせる。
「なるせ。友達としてなら俺も好きだよ」
「うん、そうだね」
「それ以上には見れないよ」
「俺もそうだと思ってた」
じゃあ何がキッカケで変わったんだ。特別変わったことなんてしてないし、話してただけだろう。
「一回さ、キスしていい?」
「ダメだろ!」
「なんで!?」
「逆になんでいいって言うと思った?!」
「頬は?」
頬なら…..
「いや!ダメだろ!」
「お願い!」
必死だな。もし俺が女でなるせにそういう感情を持っていたら歓喜してるだろうけど。
「なんかの勘違いだって!落ち着け」
「それを確かめるためにキスさせろ」
押し倒されている状況は変わらないのに、無理矢理してこないのは優しさなのか理性なのか。
OKしないときっと退いてくれないだろう。
いやでも、友達とキスはどうなんだ。
したとして、この関係が気まずくなるのは嫌だな。
キスが上手くても下手でも、気持ち悪くなくても、どうなっても気まずいだろ。
「らっだぁ、お願い」
「っ!」
耳元でいきなり低音で囁くな。さすがにびっくりするだろうが。
「優しくするから」
「やめ..ろっ!」
体勢の不利を利用してきやがって。身を捩るも、馬乗りされて身動きは取れない。囁かれるたびに背中に電気が走るような感覚になる。
心なしか鼓動も早くなってる。
「らっだぁ」
「っ!わかったから!」
言ってしまった。どうしよう。もう後には戻れない。
「目、閉じて」
こうなったら男に二言はない。ぎゅっと目を閉じてその時を待ってやる。
柔らかい感触が唇に当たる。いつだったか、柔らかそうと思ったことがあった。
本当に柔らかい。あとぬるっと温かい。
ん?
15,418
yuuna
「おい!っ…んぅ!」
舐められた。びっくりして声を出した隙に舌を入れて来た。
やばい、やばい。口ん中で動き回るな。
「んんぅ、ふぅ..ん!」
こいつの舌の動き、慣れてる感じがする。なんか腹立つな。歯をなぞったり、壁も舐めてくる。囁かれた時の電気がさらに強めに走る。
「ゃ、っんぅ..!」
しばらく好き勝手に口ん中を荒らされ、軽く酸欠状態だからか、涙が溜まる。そんなのお構いなしに続けるなるせ。
飲み込めない唾液が口端から溢れるのを指で拭ってくれるが間に合わない。二人分だからな、それはそうだ。
「…く、るし!っんぅ」
頼むから少し息継ぎさせてくれ。
頭がぼぅっとしてきて、さっきまでごちゃごちゃ考えてたことがどうでもよくなりそうだ。
舌を絡められて、互いの唾液の音が耳を刺激する。
あぁ。やばいなぁ。
「なぅ、せぇ..ん」
最後に軽く吸われて離れていく。求めていた酸素を取り込むように大きく息をする。
終わったのか。
「らっだぁ、俺確信したよ。お前のことが好きだって」
「俺は…はぁ、わかんねぇよ」
なるせはやっと俺の上から退いて俺を起こしてくれる。そのまま手を引かれソファに座らされた。
俺の隣に座るなるせに手を握られて、思わず軽く握り返した。
「手、握られるの嫌?」
「嫌じゃない」
「頭撫でられるのは?」
「嫌じゃない」
そう言って撫でてくる手は心地よかった。握ってる手も温かくて安心感がある。
「キスしてみて、嫌だった?」
「….」
気まずいとは思った。この友人関係が壊れるのは嫌だし、そもそも男同士でするものじゃないだろって。
でも実際にしてみたら、嫌だと思わない自分がいた。どちらかといえば、もっと。
「顔真っ赤で可愛い。何考えたの?」
「いや、違くて!これは、その!えっとー…」
もっとってなんだ。しどろもどろな俺を見てニコニコしているなるせ。あぁむかつく。手のひらで踊らされてる気がする。何言っても喜びそうだ。
すると頬に柔らかい感触が。さっきと同じものだと直ぐにわかったけど、抵抗はしなかった。
頬、鼻先、瞼、おでこ、耳。
至る所にキスされる。くすぐったくて、少しだけ心地よくて、されるがままにじっとしていた。
「嫌だった?」
嫌じゃないのが嫌だった。
なるせのことは好きだけど、所謂恋愛感情かと聞かれれば素直にそうだと言えない。
「難しく考えないでさ、俺とのキスは嫌かそうじゃないかだけ考えてみてよ」
「….い、やじゃ、ない」
「嬉しい」
またキスされる。
俺は色んなことを考え過ぎるのか。今は素直になるせとのキスは嫌ではない事を認めればいいだけなのか。
「俺はらっだぁのことが好きだけど、まぁ押し付ける事はしないよ」
「そうなん?」
「うん。脈アリなら押してくけど。基本待つよ」
優しくて気遣いが出来るのがなるせの良いところ。そういうところ好感持てる。
「俺が好きにならないっていう可能性はお前の中にある?」
「んーないかな。そもそも嫌なら押し倒した時点で殴るなりして出ていけばよくね?」
「まぁ、確かに」
それはそうだ。思い切り抵抗すればなんとか出来たはずだもんな。でもしなかったということは俺は。
それくらいにはなるせに気を許しているってこと。
「…ちゃんと答え出すから、待っててくれるか?」
「うん。それまで俺は毎日好きだって言ってあげるよ」
そう言ってまた軽くキスをしてくる。
あぁ、俺が完全に落ちるまでそう時間はかからないだろうな。
…end
コメント
1件
うわあ、やられた……冒頭の「なんとなく」から始まって、押し倒しからの告白、キスへの流れが、とにかく自然でかつ甘い。rd視点だからこそ、ぐちゃぐちゃした思考と戸惑いがリアルに伝わってきて、読みながら思わずニヤニヤしちゃいました。「嫌じゃないのが嫌だった」って心情、めちゃくちゃ刺さります。なるせの優しさと押しの強さのバランスも絶妙ですね。この先、どう答えを出すのか気になる……!