服屋さんを出てからと言うものの、視線が気になる。
歩くたびにこっちをチラチラ見る人たちに首を傾げる。
ショーウィンドウに写る自分に先程まではあった自信が段々と薄れていく。
「やっぱり似合ってねぇのかな…」
首を再び傾げた。
「あのーおにーさん、1人ですか?」
「……」
「あなたに言ってるんだけど」
「はい?」
声をかけられた方を振り向くと大学生くらいの女の人が立っていた。
てっきり他の人に声をかけてるものと思っていたから。
「え俺ですか?」
「あなたしかいないでしょ?」
綺麗めなその人は俺に近寄る。
「1人なら私とどっか行かない?」
「ぇ、いや、」
「お金なら私が出すし、ね?」
じりじりと寄ってくるその人の気迫?に怖くなる。
「ご、ごめんなさいっ、せっかく声をかけてもらったんですが友達と待ち合わせしてるのですみません、ありがとうございました!」
所謂、逆ナンというやつだとようやく察して走ってその場から逃げた。
「びっくりした…」
今まで、あんなことなかったから耐性なさすぎてどもってしまった。
いつもはみんなといるためか、あんな風に声をかけられたことなかったし。
「なんでこんな平凡な俺に…?」
疑問に思いつつ、逃げれたからいっかと流すことにした。
くぅ、とお腹が間抜けにも小さく鳴った。
「……そういえば昨日の夜からなんも食べてねぇや」
ちょうど逃げて来た先の広場にオープンカーが停まっている。
「クレープ屋さん?」
女子高生や子供連れの親たちが並べられたテーブルとイスのところで可愛らしいそれらを食べていた。
「俺が行ったら浮くかな…まぁ、背に腹はかえられぬってやつか」
そんなたくさん食べるつもりもないし、とオープンカーに近付く。
「いらっしゃいませ…ひぇ、」
「ん?ひぇ?」
「し、失礼しました。…何になさいますか?」
このお店の店員さんもあの服屋さんみたいな顔をしている。
「えっと、おすすめとかってありますか?俺、こういうとこあんま1人で来たことなくて…店員さんのおすすめください」
恥ずかしくてほっぺを掻く。
情けない顔をしながら笑うと、真っ赤になりながら喜んで!と可愛らしい顔に似合わないような大きな声で返事をしてきた。
「そこのお席でお待ちください!」
「ありがとうございます」
指定された席に座る。
待つ間にスマホを開いて、通知の確認をして返事をしたりSNSを見たりしていた。
「あ、あのお待たせしましたっ」
しばらくして、店員さんが声をかけてきた。
「わっ!ごめんなさい、わざわざ…。呼んでくれたらよかったのに」
俺の目の前にきてクレープを渡してくれる店員さんにお礼を言う。
代金を払い、申し訳なくなる。
「いえ!全然気にしないでください!」
寧ろさせてください!なんて言葉も言われた。
「わぁ、美味しそう。ありがとうございます」
美味しそうなクレープを見て、自然と笑みが溢れる。
「はぅ…生きててよかった…」
店員さんの独り言にまたしても首を傾げつつ、一口食べる。
「!、おいし」
甘すぎないクリームに合わせたチョコソースのお陰で食べやすい。
中にもフルーツがたくさん入ってる。
歩きながら食べるのは行儀が悪いから座ったまま食べる。
「ん、」
またここにぺいんとたちと来よう、と思いつつ忘れかけていた疑念が思い出された。
「……なんか理由があるに決まってる」
そう思わないと、この関係を崩しそうで。
「疑うなんて俺、駄目な友達だ。…信じよう」
クレープを食べ終わって包んでいた紙をくしゃりと丸める。
「ごちそうさまでした。今度は友達たちと来ます」
「ぜ、是非!」
満面の笑顔で言われて、重くなっていた心が少しだけ軽くなった気がした。
コメント
2件
わぁ、めっちゃ嬉しいです(*'ω'*) 元々、メモに残していたものを今日に合わせてあげさせてもらったので…。 ありがとうございます!
文面が好き 書くの上手いですね、ほのぼのします(*^^*) トラゾーさん元気になって来て嬉しいです