1話
それはいつも通りトイレ掃除をしているときのこと
私、八尋寧々には最近悩みがあった
寧々「はぁ~~……」
光「先輩どうしたんすか?」
花子「すごいおっきい溜め息だね…俺たちでいいなら話聞くよ?」
寧々「大したことじゃないけど…実はね最近夢見が悪いというか…」
光「それって悪夢を見るってことですか?」
寧々「うん…何でなのかはわからないけど…」
花子「なるほど…悪夢か…」
花子くんは面白そうに微笑むとこう口にする
花子「少年は?悪夢見たりする?」
光「え…そりゃ悪夢くらいは見るけど…ってか人間なら誰だって一度くらいは悪夢を見るって」
花子「ねぇ…悪夢を見る理由知りたい?」
寧々「もし知ってるなら教えて!悪夢なんて見たくないからお願い!」
光「俺も俺も!花子、教えてくれ!」
花子「悪夢を見る人ってね……」
私と光くんは花子くんの言葉の続きを待った
原因さえわかればもう悪夢を見ることなんてないはずーー
花子「欲求不満なんだってさ!」
寧々「は?」
光「え?」
花子「だから…欲求不満だよ」
できれば聞きたくなかった言葉が出てきて私と光くんは聞かなかったことにする
知らないふりでトイレ掃除を黙々と進める
花子「ちょちょちょ!聞いといてそれはないって!?」
寧々「聞いて損した…」
光「先輩!真に受ける必要ないですよ!いつもの冗談に決まってますから」
?「そうとも言えないけどな…」
凛とまっすぐな声が頭上から響いて聞こえてくる
しかし声の主は一向に姿を現さない
花子「珍しい来客だね…屋上にいたんじゃないの?」
?「俺がどこにいようと勝手だろ」
目の前にいきなり人が現れ思わず私は叫んでしまう
寧々「…ぎゃあぁぁ~~!!」
?「表情をコロコロと変えて忙しい人間だな、お前」
寧々「だ、だだだ誰?!」
暖天「暖天だ…城山暖天…普通は自分から名乗るものだ、覚えておけ」
寧々「は、はい…あ、私は……」
暖天「八尋寧々に源光だろ?そこの七番様から聞いてるよ」
寧々「それって花子くん?」
光「花子と友達なのか?」
光くんの言葉に反応したのは暖天という人ではなく花子くんの方だった
花子「そう!暖天と俺は友達なんだ!」
暖天「誰がてめぇと友達なんかになるか!セクハラ怪異野郎!」
寧々「待って!」
その時私はその人の顔を初めて見た
黄緑の髪に狐のお面を被っていて扇子を持っていた
寧々「確かに花子くんはヘンに思わせぶりなこと言うし、すぐセクハラするし、無神経だし、予想外の理由で急に態度が変わったりするけど!」
花子「ひどい言われようなんだけど…」
寧々「でも優しくて…危険から守ってくるし、本当はいい子なんだよ?」
暖天「悪い…アンタの友人を悪く言いたいわけではないんだ、ただ…会ったら挨拶を交わす程度で友達と言うのかと思っただけだ」
光「確かに…そこの境界線は難しいよな…」
暖天「ところで話を戻しても構わないかい?」
そう言えば…悪夢を見るのがなんか欲求不満?みたいな話をしてたんだった
それでこの暖天って人があながち間違いじゃないみたいなこと言ってたんだっけ…
暖天「欲求不満は言い過ぎかもだが…悪夢を見るってことは寂しさとかの現れかもな」
寧々「寂しさとかの?」
暖天「あぁ…悪夢に出てくる幽霊の類いは自分の寂しさの現れと言われている」
光「ほら!やっぱ真に受ける必要なかったんすよ!」
暖天「中には欲求不満っていう可能性も否定しきれないけど…本当のところは俺も知ら…………っ」
花子「お呼ばれかな?行ってくれば?」
暖天「はぁ…めんどいけど言われなくても行くよ、邪魔したな…」
それだけ言ってふらっといなくなってしまった
なんか不思議な雰囲気の人だったな
寧々「花子くんってあの暖天って人のことよく知ってるの?」
花子「まぁ、幽霊になってたまたまここに行き着いたってことは知ってる」
光「幽霊ってことは…アイツ死んでんの?!」
花子「うん、死んでるよ?」
寧々「だから見覚えがないんだ…」
次回へ続く________
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