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さらに亜里砂さんは、完全に銃刀法違反といった感じの長くて細い包丁を取り出す。
「専用包丁もついでに用意したのだ。今日まで何回か味見ついでにカットの練習をして、薄く切ることが出来るようになったのだ!」
「ちょっとその前に記念写真なのですよ」
未亜さんがスマホを構え、巨大豚の脚まるごとハムを、他の料理も含めて何枚も写真に撮る。
「冬だと外でもハエが来ないので、まったり食べられるのだ」
「そもそも野外で食べるものじゃないだろう。僕も食べるのは初めてだけれどさ」
「というか、普通の日本人は生ハム原木を買って食べるなんてしないのですよ」
「でもやっぱり美味しそうだよね」
「それは間違いないと思うぞ」
亜里砂さんが、にやにやしながら切り口をカバーしていた皮部分を外す。
すでに何回か切ったらしく、切れ目はきっちりと平面になっていた。
そこを、あの長くて細い包丁で薄く何枚も削り取り、食器に盛る。
その様子を、未亜さんが何枚も写真に撮って。
「さて、とんでもないものが出たけれど、取り敢えずスープも配っていただこう。それにそのサイズの生ハムは、一気には食べられないだろ」
「父に言わせると、皆で食べれば1週間はかからないだろう、との事なのだ」
「でもいいの? これって相当高いんじゃないかと思うけれど」
「こういうのはノリで食べないと面白くないのだ。だから11月終わりに届いた時から、何とか食べ尽くさないようにしつつ、出番を待っていたのだ」
まあそんなわけで、亜里砂さんの大物に話題が全て行ってしまったけれど、
温かいヨーグルトトマトスープを配った後、
「いただきます」
となる。
ついつい全員、最初の箸が生ハムに伸びてしまう。
「今まで食べた他のハムと全然味が違うね」
「そうですね。塩がちょっと強めですけれど、それ以上にうま味が凄く濃いです」
「これ、サラダに巻くといい感じなのですよ」
最初に削った生ハムは、あっという間に消えた。
「次は私が切ってみたいです」
美洋さんが、生ハムカットに挑戦する。
でも生ハムだけでなく、他の料理も当然美味しい。
「この煮物、いかにも日本の味って感じだよな」
「塩辛もなかなか美味しいのです。塩味かなり控えめなので、思い切りよくビリヤニに載せて食べると、いい感じなのです」
「やっぱり甘辛い肉は王道なのだ」
そんな感じで、全部の料理がどんどん減っていく。
生ハムカットも全員が挑戦し、カット面は遂に骨まで到達した。
「こうなったら、次はどうするんですか」
「もう少し削った後、ひっくり返して台に乗せるのだ」
そこで先輩がストップ指令。
「でも今日はこれで充分だろ。テスト終わりにも、また持込パーティやって食べればいい。先生にも見せてやりたいしさ」
「本当はもっと食べたいけれど、正論なのだ」
そんなわけでハムは再び切り口を皮でカバーし、新聞紙で包んでザックの中に収める。
他の料理も綺麗に空になった。
そんなわけで、それぞれ料理をしまって食器も片付けて。
「さて、名残惜しいけれど帰るとするか」
ザックを背負って立ち上がる。
帰りは近道を通って帰る予定だ。
前進して、次のピークが分岐点。
ハイキングルートは右に下りていくのだけれど、そこを尾根沿いに左へ。
あとは細い道が尾根沿いに続き、学校の裏側駐車場付近に辿り着く。
夏だと草などで道が見えにくいけれど、この季節なら道もわかりやすくて歩くのも楽だ。
景色が今ひとつだし、登る一方で面白くないから、行きには使わないのだけれども。
「今回の持込ハイキング、美味しかったですね。テスト後もまたやりたいです」
美洋さんの意見に、全員が賛成。
「確かに、どれも美味しかったな。美味く方向性が被らなかったしさ」
「強いて言えば、あの生ハムは反則だったのですよ。美味しかったのですけれど」
「本当、またやりたいね」
そんな感じで、持込ハイキングは満足のままに終わった。
なお、これだけ楽しんでも、学校に着いた時間はぎりぎり午前中。
午後は未亜さん監督の下、テスト直前対策が行われたのは言うまでもない。