テラーノベル
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「こちら3班、何も発見できません」
「6班、7班も同じです」
報告を受けた場所に西山龍平が到着した時、そこにはただ死体だけが転がっていた。
雨のせいで怪物や獣の動きも鈍かったのだろう。遺体もアイテムも、そのままの状態で残されていた。
まだ子供のような子もいたのに、一切躊躇した形跡がない。一刀の元に頭の先から斬り裂かれている。惨いものだ。
そしてアイテムに手を出した形成も無い。
報告通り、これは怪物や他国、ましてや召喚者との喧嘩などの類ではない。間違いなく、ここに奴がいたのだ。
だが通常部隊にも協力を仰いで全周囲を捜索しているが、発見どころか人が移動した痕跡すらも見つけられない。
空を飛んだか? それとも地下に潜ったか?
どちらも有り得る。あの処刑を待つ神官――ヨルエナ・スー・アディンの言葉が正しければだが。
完全に手詰まりとなった中、西山龍平は大粒の雨に打たれながら真っ黒い空を眺めていた。
その耳元に、通信の声が聞こえてくる。
『早く済ませて、また迷宮に潜りたいですね』
『急がないと、全部取られる可能性があるからな。とっとと終わらせて戻ろうぜ』
「焦るな。どうせ表層は、俺達召喚者と現地人の奪い合いだ。あんな醜い行為に時間を取られるくらいなら、もう少し落ち着いてからの方が良い」
『それもそうですね』
『退屈しのぎにはちょうどいいか。まあどうせ、スキル無しなんぞが俺達の相手になるとは思わないがな』
ああ、いつかはまた迷宮に潜るさ。必ずな。
そして、そこがお前達の墓場となる。
雨の中、龍平はかつての出来事を思い出していた。
決して思い出したくもない過去。だが目を閉じれば、ついさっきの事のように思い出す。
殺してやる――殺してやる――殺してやる――真っ黒い感情が渦を巻く。
全ては自分が愚かだった。そして無知であったからだ……。
※ ◆ ※
龍平にとって水城瑞樹は、憧れの対象どころか崇拝する存在である。
容姿端麗、スタイル抜群。そのくせ特定のグループを作る事もなく、誰にでも分け隔てなく接した。
ただ、これは良い事だけではない。勘違いして彼女に告白した男は数知れず。デートのお誘いまで含めれば、どれだけの数になるか。それも通っていた中高だけではない。他の学校からも来る始末だ。それどころか、大学生までもが含まれていた。それほどまでに、彼女の存在は広く知れ渡っていた。
だが全員が等しく、分け隔てなく撃沈。彼女には特定の男性と付き合う気がなかったのだ。
そんな彼女と出会ったのは中学の頃だが、その頃の龍平にはそれほど異性への興味はなかった。だから噂の先輩程度の認識だった。
だが中学三年の冬。受験は控えていたが、もう余裕も余裕。進学校である杉駒東高校ではあったが、選んだのは家が近いというだけの話。真面目に励めばもっと上の高校も狙えたが、最終的な進路を考えた時、そこまで受験勉強のために時間を割く理由が無かったからでもある。
世間的に言う天才というタイプの人間であり、同時に他者を引き付ける才能にも恵まれていた。
付け加えれば、政治家の家庭でもあり、親族のグループ企業の総資産額は天文学的とも言われる。例え人生を10回やり直したとしても、常に遊んで暮らしていけるだろう。もっとも、そんな退屈な暮らしに興味は無いし、親族とはいえ他人に頼った人生などまっぴらごめんだ。
彼の周りは、常にそんな彼を中心にして回っていた。そう、あの日までは。
人脈を得るには、ふんぞり返っているだけではダメだ。しかも自分は中学生。自身は何も持っていないのだ。
将来を考えても、積極的に人の輪に入らねば何も掴めない。付き合う相手こそ選べども、付き合う場所は選ばない。見聞を広めると同時に相手の趣味も探る。
そしてこの日、友人に付き合っていった先はゲームの大会であった。
つまらないし下らない。
そう思いつつも、この大会には西山グループが支援していたプロチームのメンバーも何人か出場していた。
規模は大きくはなく、賞金額もわずかな地方大会。結果など最初から分かっている。
だがまあ、これも見分だ。そう思っていた彼の目の前に、女神が降臨した。
優勝したのはただの高校生。しかも1年生であった。
はしゃぎ過ぎるほどには騒がず、だけど大人びた喜びを見せる彼女に一目で恋に落ちた。
その時から、彼女――水城瑞樹は、龍平にとっての神となった。
自分を中心に廻っていた世界から離れ、彼女を中心とした人生に変わったのだ。
#異世界ファンタジー
りと🍒♬
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ばたっちゅ
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コメント
1件
うわ、めちゃくちゃ重い回でしたね……。今の冷徹な龍平さんと、中学時代に瑞樹さんに一目惚れして人生が変わった少年のギャップがすごくて。崇拝するところから始まった恋って、ここまで歪んでしまうのかと思わされました。雨の中の独白「♡♡♡てやる」の繰り返しが胸に刺さります。この過去が今の物語にどう繋がるのか、続きが気になります。