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ゼフはクロスフォード家に勤めて50年になる。
元々冒険者として生活をしていたが、ある日依頼で怪我をしてしまい、クロスフォード領に迷い込み、先代領主に世話になった事がきっかけで使用人として仕え始めることになった。そして使用人になってから数年後、働き者のゼフは努力と姿勢が評価されて、当時子供であった現クロスフォード家当主の教育係兼専属執事となった。
そのて専属執事として立派な領主に育て上げた事などが評価され、ゼフは次代の子、アルトの専属執事も担当するようになる。
ゼフは評価されたことよりも自分を信用して任せてくれたことに感激し、クロスフォード家にさらなる忠誠を誓った。
しかし、そんなゼフであったが、アルトが五歳となり教育を始めた時ある違和感を感じた。
教えることはすぐに覚え、そして少し大人びていた。
それは月日が経つにつれて如実に現れるようになった。
七歳になる頃には教育範囲はすでに終わっていた。
ゼフはアルトは才能があるように思えた。
これでクロスフォード家は安泰だ。
そう歓喜に思えた。
それから一年後、事件が起こる。
アルトが急に倒れてしまったのだ。
ゼフはその知らせを聞いた時、腰を抜かすほど驚いてしまった。
すぐに駆けつけ、看病をした。
クロスフォード家のお抱えの医者を呼びすぐに診察をさせた。
結果は異常がなく原因不明。
それに満足できなかったゼフではあったがアルトの身に何もないと思い安堵した。
それから数日アルトが目覚めたあと、また変化が起きる。
アルトは今まで以上に勉強に励むようになり、そして特殊な方法で剣や魔法の戦闘訓練なども死に物狂いで始めるようになった。
これにはゼフも心配をした。
そして、ゼフはいつも通り変わらずに接したものの、やはり豹変具合が異常だったため、失礼を承知で聞いてみた。
すると帰ってきた返答に驚いた。
『俺はこの方針を変えることはない。俺は確かに他の人より多少は優れているかもしれない。ゼフの言う通りにやれば将来他の人より優れた人間になれるかもしれない。でも、それ以上にはなれない!!普通にやったところで俺は本物にはなれないんだ!』
『俺には目標がある。しかしその壁は高い。でも俺がここに生まれたからにはそれを達成しなければならない』
ゼフはアルトが言ったことはクロスフォード家を今以上にするという意思表示だとわかった。
アルトの言葉を聞き、納得をした。
おそらくアルトが倒れた時、死の淵を彷徨ったのだろう。
それがきっかけとなり努力をし始めたのだとわかった。
ゼフから見るとアルトには才能がある。
しかしそれは、秀才レベルであり、天才とは言えない程度だ。
そして、ゼフはそれをアルト本人に伝えることはしなかった。
天才ではないと伝えては向上心をなくしてしまい、秀才であると伝えては増長すると思ったためだ。
しかしゼフは、今のアルトを見たら早く伝えた方が良かったのではないかと思い始めていた。天才でないと伝えても向上心はなくさず、秀才であると伝えても増長はしないと考えたからだ。
アルトの決意、行動それらは自分を高めるために行動している。
ゼフは考えを改め、アルトが未来どのようになろうが、支えていこう。
そう決意した。
「このことは旦那様にご報告しなくては!!」
ゼフはアルトが変わったことを嬉しく思い、報告をすることにした。