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それにしても、とんでもない話が出てきたものだ。
「毒を盛られたって」
「植物由来の毒が、置いてあったカレーに盛られたのです。術で見れば毒入りなのはわかるので、食べずに済んだのです。犯人は術で確認出来たのですが、雅彦さんの意向で、あえて追及しないでいるのです」
そんな事もあったのか。
なかなかとんでもない世界だ。
「ただそんな里を維持させているのも、間違いなく父なのです。事業をあえて拡大せず、里の中で動かせる範囲内にわざと調節したりもしているのです」
「事業失敗で離散寸前だった松原家と梅丘家を支援して再建させたのも、事実上、雅彦さんなのですよ。家の面子があるので、表だってはしていませんが、仕事を回すなり、信金を通じて資金援助をしたり、実情は里の皆が知っているのです」
なかなか僕には理解しにくい世界だ。
ただわかるのは、美洋さんの父、雅彦さんが飛び抜けて有能な事。
そして、里を何とかして維持しようとしている事。
「そして私は、あの里の閉鎖的な空気が凄く嫌いなんです。里での私には常に、『あの竹川家の』という頭文字がついて回る。やっと中学で里から離れたところに来ても、こんな感じなんです。
父がいるから今の私もいるのは確かです。けれど父がいなければ、もしくはここまで商売向きでなかったら、今頃は里そのものが無かったかもしれない。そう思うと色々複雑な気持ちです」
雰囲気的にはわかったけれど、状況はなかなかややこしい。
何とか整理しようとしたけれども。
でもその前に、気になる事を一つ聞いておこう。
「今は未亜さんが家にいないけれど、毒とかは大丈夫なの」
未亜さんは頷く。
「あれは私が先に発見したのですけれど、実際は美洋のお母さんも気づいたと思うのですよ。お母さんはそこそこ自衛の術や、延命術とかは使えますので」
そっちは心配いらない訳か。
さて、なら頭の中で状況整理だ。
里は、美洋さんのお父さんのもたらした新しい商売ややり方を嫌っていながらも、それにすがっている。
そんな里を維持しているのも、結果としては美洋さんのお父さんで。
そして美洋さんは、そんな古い考えの里を嫌っている。
更に、自分がまだ『美洋という女の子』よりも、『竹川家の長女』として見られることを嫌がっている。
大雑把にまとめると、こんな感じか。
なら、里の事と美洋さん自身の事を分けて考えれば、少しは簡単かな。
ちょっと考えて、流れを確認して。
そして僕は、美洋さんに聞いて貰うために、
あえて未亜さんに対して、聞いてみることにする。