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「未亜さん。美洋さんのお父さんがやっている事は、里にとっては『里の維持』だと思う? それとも『里の終わりの始まり』だと思う?」
美洋さんは驚いたように目を見開いて、そして未亜さんは頷いた。
「同じ事を、雅彦さん本人が言っていたのですよ。『僕はこの里をもっと後の世代に残すため、最善の方法を考えてやっているつもりだ。でも結果的には、この里の「終わりの始まり」の引き金を引いてしまったかもしれない』って」
「『だから美洋も未亜も、里の事はあまり考えなくていい。むしろ今は、里の外の色々を自分の目で見て感じて、自分が何をしたいかを、里にとらわれず考えて欲しい』って。この学校に来る前に、そう言われたんです。でも、何故それを」
うん。美洋さんは、きっと近すぎて、かえって気づけないのだろう。
でも、きっと。
「なら、出るにせよ残るにせよ里の事は、お父さんに任せておくのが最適解なんだろう。情緒的な事は置いておいて」
「その通りなのです」
未亜さんには通じた。
「どういう事?」
美洋さんには、すぐには通じない。
多分、色々と近すぎて。
「他人の、それも中学生が言うのも変かもしれないけどさ。閉じた状態の社会を、外側の情報を受け入れつつもそのままでいる事は、きっと無理なんだ。江戸時代の鎖国とか現代の某国のように、知識を制限しない限りね。
無論、考えの固まってしまった人を変えるのは難しい、というか無理。でも年月単位でみると、人そのものも入れ替わっていく。それこそ十年単位くらいで見ればね。
だからきっと、美洋さんのお父さんが外の空気を入れてしまった時点で、もう里は変わっていく事が決まってしまった。そしてそれを一番わかっているのが、変えた本人、美洋さんのお父さんなんだと思う。だから最初に未亜さんに聞いたんだ。維持なのか、終わりの始まりなのかって。まさか本人も同じ言葉を使っているとは思わなかったけれど。
そして物事を動かす力なんてのは、結局は暴力か資力なんだ。中学生が言う事じゃないけれど、歴史的に見てね。資金力はもうわかっている。そして未亜さん、術士の次代がここにいるという事で、もう一つの力の方も想像がつく。だから抵抗勢力は、抵抗する以外には何も出来ない。時間と共に流されるだけ。もっと頭がいい人が出てくれば別だけれども。
未亜さんの採点で、どれ位当たっている? 僕の想像」
「ほぼ満点をつけていいと思うのです」
未亜さんは頷いた。
「ついでに言うと術士のうち、今代の金は完全に竹川家側、白は完全な中立、黒は本来は桐平家側なのですが、柾さんの件もあって現在は空席なのです」
何となく、予想通りだ。
なら更に一歩、踏み込んでおこう。
「更に、この際だからあえて確認しておくよ。未亜さんは少なくとも今は、自分の意志でこの場所にいるんだね」
「色々考えもしたし悩みもしましたが、その通りなのですよ」
「それを前提に、この先の話を続けていい?」
「いつかは必要な事なのですよ」
未亜さんは、はっきり頷いた。
僕が言いたいことが通じている。
なら僕は、更にこの話を先へと続けるべきなのだろう。
美洋さんの思いと家と里と、そして未亜さんの立場と思いを整理するために。
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