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コユキの言葉に度肝を抜かれてしまったのは、キャシーだけでなく、戦いから離れてコユキの近くにいたナターシャやサラ、王(ワン)達も同様であった。
因み(ちなみ)に褐色のスワヒリ語を話す彼女の名前はエニイと言うらしく、彼女も同様に固まっていた。
彼女達の状態を気にも止めずにコユキはスプラタ・マンユを振り返って聞いている。
「ねぇ、あんた達も結婚とかしてるの? オルクス君やモラクス君も、正直に言って頂戴よ」
コユキの問い掛けに、みんな手や首を左右に振って否定していた、シヴァだけですとか、グループに一人はジャニー○と一緒とか、少し古い情報を出したりして必死に弁明をしていた。
「あ、アムシャ・スプン、タ……」
「大魔王、いいえ魔神の王ルキフェル直属の最高位の魔王種アル…… なぜ、ここにアル……」
「スプラタ・マンユ? スプンタ・マンユじゃなくて? ボルシチ」
聖女達の驚愕に怯えが混ざった声に答えたのはアヴァドンであった。
「貴様等(きさまら)、コユキ様や善悪様の仲間らしいから見逃してきたが、もう我慢の限界だ! 我等は兎も角、至高のお方の御名を人間風情が口にするとは、不敬の極み! 『ひれ伏せ』!」
叫びと共に揃って地面に膝を落としたイノセンス・メイデンズの聖女達は身動き出来ずに苦しそうに呻き、そんな彼女達にモラクスが静かに語り掛ける。
「聖女達よ、今日の所はコユキ様、善悪様に免じて見逃そう…… 但し、再び至高のマンユをその口にする事は許されない事と知るのだ。 ましてや創造神の御名を大魔王などと貶める(おとしめる)事などもっての外と魂に刻むが良い、さもなくば、我等スプラタ・マンユの手によって、人類は滅びの日を迎える事になるであろう。 良いか、努々(ゆめゆめ)疑うこと無きよう…… ついでだが、アムシャと呼ぶ事もやめてくれぬか…… 失った多いなる寄る辺(よるべ)を思い出すのでな…… 今後は、スプラタ・マンユと呼んでくれ…… アヴァドン」
聖女達が頷いたのを見て、モラクスがアヴァドンの名を呼ぶと、漸く(ようやく)イノセンス・メイデンズの面々は自由を取り戻すのであった。
立ち上がったキャシーは、呆然と立ち尽くす親友、コユキの顔に気が付くと心配そうに近付くのだった。
実際コユキが考えていたのは、オルクス達が何か背負っていそうだとか、ツミコおばさんの人生についてだとかではなくて、小腹が空いたな、今食べたら怒られるかな? であった。
そうとは知らない、優しいキャシーがコユキを慰めるように語りかける。
「ねぇ、そんなに悲しい顔をしないで! 貴女は全聖女の憧れの存在『真なる聖女』に選ばれたのよ? もっと嬉しそうに笑って、昔のように、ねっ! コユキ、おけい?」
「……………… さま」
「え? 何? 何て言ったのコユキ?」
「さまよ」
「?」
「鈍いわね、様付けて呼びなさいよ、キャシー、いや、キャスゥ!」
「は?」
「当然でござるな、我輩たちは特別な存在故、であろ? キャス?」
「コーフクまで、な、何を言って、いる、の?」
ポカンとするキャシーに対してコユキがイライラした感じで言った。
「だから~、アンタ等(ら)凡百の雑魚(ザコ)共と違って、尊い(たっとい)アタシ達二人は、敵の本拠地に向かってやるわよって言ってんのよ! アンタ達チンピラはここで小物達の相手でもしててね、って事よ、あと、さっきも言ったけど、これからは様付けしないと、アタシも善悪も、あ、違った、『真なる聖女』様も『聖魔騎士』様も返事なんてしてやんないからねっ!!」
ふふん、と鼻を鳴らしたコユキを、固まって見つめるイノセンス・メイデンズの面々を置いて、さっさとボシェット城へ向かって歩いて行ってしまう『聖女と愉快な仲間たち』であった。
呆然とその背を見つめていたキャシーに中国の聖女、王(ワン)が話し掛けた。
「な、なんか、凄いわね、あ、あの娘…… アル」
固まっていたキャシーがその言葉に答えた。
「う、うん…… 昔からそうなの…… そう! それでこそコユキよ! ワタシの親友だわ♪」
何故かキャシーは自慢げに、その大きすぎる胸を張って、周囲の聖女達に嬉しそうに微笑んで見せるのであった。