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#戦国時代
眠狂四郎
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#戦国時代
眠狂四郎
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#軍師
眠狂四郎
153
「なんだと……」
カンパへ向かった直後、グラン軍が城外へ打って出たとの急報が届いた。
バルカは馬を飛ばし、戦場へ引き返す。
だが、到着した時には、すでに味方の陣形は乱れ始めていた。
「各隊を立て直せ! 反撃する!」
将兵へ命令を飛ばした、その時――。
「報告! 西門より別働隊が出撃しました!」
「……マゴ。」
「はっ。」
「兵を二つに分けろ。西門の敵を押さえろ。」
「承知!」
マゴは騎兵を率いて駆けていく。
その背が遠ざかった直後だった。
「東門です! 東門からも新手が!」
戦場が、一瞬静まり返る。
バルカは手にしていた指揮杖を、力なく地へ放り投げた。
土煙の中へ転がる杖を見つめたまま、小さく呟く。
「……退却だ。」
「総大将!?」
「やられた。傷が浅いうちに引く。」
「退却する。」
五千余の死傷者を出し、バルカ軍はカンパへ退却した。
マルスは返り血を浴びたまま城へ戻る。
城門では、市長が笑みを浮かべて出迎えようとしていた。
「ご苦労――」
言葉は最後まで続かなかった。
一閃。
市長の首が石畳へ転がる。
マルスは血を払うこともなく、グラスへ命じた。
「内通者七十名。」
「全員、処刑せよ。」
「はっ。」
城内に悲鳴が響く。
バルカへの内通を企てた者たちは、マルスを若く甘い将と見ていた。
勝てば許される。
負けても命までは取られない。
そう信じていた。
だが――。
グラン王国は、裏切りだけは決して許さない。
そのことを、彼らはこの瞬間になって思い出した。
翌朝――。
バンデットは川辺でしゃがみ込み、何かをしているマルスを見つけた。
近づいてみると、昨日の戦いで敵兵が捨てていった剣や盾を、
一つひとつ丁寧に洗っている。
「……何をされているんですか。」
マルスは顔を上げ、少し照れくさそうに笑った。
「ん? ああ。」
「使えそうなのは拾って、あいつらに渡そうと思ってな。」
奴隷兵たちのことだった。
昨日、鬼神のように敵陣を駆け抜けていた将と、目の前で泥だらけの剣を磨く男。
そのあまりの違いに、バンデットは言葉を失う。
「……では、私も。」
「おう、頼む。」
二人は並んで腰を下ろし、川の水で武具を洗い始めた。
その頃、川向こうでは朝からグラスの怒鳴り声が響いていた。
「昨日のお前たちは何だ!」
「そんな根性でグラン兵が務まるか!」
「第四番隊!」
「俺が『よし』と言うまで、飯は立って食え!」
「えぇーっ!」
奴隷兵たちの情けない悲鳴が朝の空に響く。
それを聞いたマルスは、腹を抱えて吹き出した。
「はははっ……グラスの奴、本当にやらせる気か。」
その笑顔を見たバンデットは、静かに思う。
(この人たちについて行こう。)
バルカ敗北の報が王都へ届いた、その頃――。
ライナーは、一通の返書を握り締めていた。
「……余は、これほど無礼な手紙を知らぬ。」
その声には怒りが滲んでいた。
差出人は、シラクス王。
シラクスは先王の代より、グランへ忠誠を誓う最大の同盟国である。
その庇護のもとで交易を広げ、豊かな繁栄を築いてきた。
だが――。
先王が世を去り、カンナルでグラン軍が大敗すると、
王位を継いだ若き王は、あっさりとバルカ陣営へ寝返った。
ライナーは返書を机へ叩きつける。
「先王から巻き上げたものをすべて返すなら、考えてやらんでもない。」
「……ふざけおって。」
玉座の間が静まり返る。
正面には、マエクスとファービーが膝をついていた。
ライナーは短く命じる。
「シラクスを討て。」
「はっ。」
「はっ。」
その日――。
シラクス討伐の命は、第十三独立部隊へ下された。
「私も連れて行ってください!」
バンデットは涙を浮かべながら訴えた。
ノーラには、ようやく王都から援軍が到着していた。
新たな命令書とともに。
奴隷兵たちは約束どおり解放された。
だが、グラスとともに戦い続けたいと願い出た者たちには相応の手当が与えられ、
そのまま第十三独立部隊へ残ることが許された。
マルスは申し訳なさそうに笑う。
「うん。」
「でも、バルカはまた来ると思うんだ。」
「その時、ノーラには君が必要だ。」
「君がいてくれれば安心だから。」
バンデットは唇を噛み締め、深く頭を下げた。
「……承知しました。」
その時だった。
海軍の部隊長たちとの打ち合わせを終えたグラスが近づいてくる。
「司令。」
「三日後には出航の準備が整うそうです。」
「そうか。」
グラスは少し言いにくそうに続けた。
「ところで……司令。」
「船酔いはしますか?」
マルスは真顔で答える。
「……駄目かもしんない。」
グラスは両手で頭を抱えた。
「勘弁してくださいよ……。」
マルスがシラクスへ旅立った後も、ノーラを巡る戦いは続いた。
バルカは自ら攻城兵器を率い、再びノーラを攻めた。
その後も二度にわたり攻城戦を仕掛ける。
だが――。
いずれも攻略には至らなかった。
戦局は、少しずつ変わり始める。
この頃、ヌミダス騎兵三百騎がバルカ軍を離脱した。
カンナル以来、勝利だけを重ねてきた軍。
その鉄壁とも思われた結束に、初めて小さな亀裂が走った。
マルスの到着に先立ち――。
グラン海軍は、シラクスの海上封鎖を開始していた。
その日。
轟音とともに、一隻の戦艦が大きく揺れた。
「何事だ!」
次の瞬間、船体側面が内側へ弾け飛ぶ。
厚い板材が砕け、海水が一気に流れ込んだ。
「浸水!」
「船を捨てろ!」
艦は傾き、そのまま海中へ沈んでいく。
艦長は城壁の向こうを見上げた。
空を覆う黒い影。
「……なんだ、あれは。」
飛来したのは、人の背丈ほどもある巨岩だった。
それは正確無比に船体を撃ち抜き――
轟音。
また一隻。
さらに一隻。
グラン海軍は何が起きているのか理解できないまま、次々と沈められていった。
城壁の上では、一人の男が静かに腕を組んでいた。
「我に支点と力点を与えよ。」
「さすれば、いかなる軍艦も沈めてみせよう。」
シラクス軍師――アルキメディア。
新たなる強敵の出現である。
コメント
1件
ああっ、第64話読み終えたよ…!😭✨ もうね、バルカ戦でのマルスの“裏切りは絶対許さない”冷酷さと、そのあと川辺で奴隷兵のために武器を洗う優しさのギャップがエモすぎてやばい…!!💕 グラスの厳しさとマルスの笑顔も良すぎたし、バンデットが「ついて行こう」って思うシーンにもう胸熱🔥 ラストのアルキメディア、新たな強敵の登場で続きが気になりすぎるよ…! 次回が待ちきれない〜!!🌸