テラーノベル
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私は腰のポケットから、二丁のリボルバーを抜き放った。
無駄な装飾を削ぎ落とした、殺戮のための鉄塊。
母の形見でも何でもない、ただの兵器。
それを、父の傷だらけの胸板に向けて、迷いなく構えた。セーフティはとっくに外れている。
「ふっ…殺れるものなら……殺ってみろ……っ」
父が嗤った。
血と吐瀉物に塗れた唇が、歪に吊り上がる。
「お前は必ず後悔するぞ……ははっ……あの女と同じ、感情に任せて……暴れる未来が見える……」
その言葉が耳に届いた瞬間、頭の中で何かが、決定的に断裂した。
母を愚弄する、その呪詛。
死の間際まで、母を貶め、私の覚悟を嘲弄するその姿勢。
この男が母の命を奪っただけでなく、その尊厳までも泥で踏みつける。
(慈悲? 後悔? 感情論?)
そんなものは、地獄へ置いてきた。
私が引き金を引き、この指を動かす理由はただ一つ。
「───ッ!!」
言葉にならない憤怒が、咆哮となって喉から迸った。
轟音と共に、二丁のリボルバーが火を吹いた。
一発目。
父の胸に穿たれた穴から、鮮血が噴水のように弧を描いた。
「かはっ……!」
二発目。腹部に新たな穴。
三発目。右腕が関節から吹き飛ぶ。
「ああ゛っ……!?」
四発目。左脚の骨を砕く。
五発目。喉笛を貫く。
六発目。
額の真ん中に命中した弾丸が頭蓋を粉砕し、父の身体は不自然に跳ね上がってから、重く静止した。
銃弾を撃ち尽くしても、私は引き金を引き続けた。
カチリ、カチリと虚しい金属音だけが響く。
薬莢はもう空だ。
なのに指が止まらない。
怒りで腱が痙攣し、腕が勝手に動き続ける。
「後悔するのは、貴方のほうよ」
私は地面に転がる、もはや肉塊に等しい父の死骸を見下ろした。
顔は原型を留めていない。真っ赤に染まった泥。
それでも、父の醜悪な執念がまだ蠢いているように見えた。
「……お、れは…まだ……死な……ん…」
か細い声が耳に届いた瞬間、私は空になった銃を投げ捨て、父の腹部を渾身の力で踏みつけた。
靴底から伝わる、生々しく潰れる感触。
内臓が弾ける音。
血溜まりが四方に広がっていく。
「しぶといわね。本当に、反吐が出るわ」
「…はっ……」
父が嗤う。
死に瀕しながらも、屈辱を愉しむかのようなその目が、たまらなく嫌だった。
母を壊した、あの狂った目が。
私は落ちていたリボルバーの一つを拾い上げ、銃口を、その剥き出しの瞳に直接突き立てた。
「あ゛あ゛っ……!」
眼球の間から溢れ出す鮮血。
父の口角が、苦痛か悦楽かわからない歪み方をする。
噴き出す返り血が顔にかかるが、拭う気にもなれない。
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