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天井から降りてきたのは、このレストランの従業員の制服である黒のベストとズボン、白シャツにグレーのスカーフを着用した我が国の皇太子殿下と、ミクパ国の皇太子殿下だ。
皇太子殿下達が、どこかでプジョル殿と俺の話に聞き耳を立てているとは思っていたが、俺が一度プジョル殿に協力をお願いをするために席を立った時に、天井にいたおふたりは見つかったと驚いたのか、天井で小さな物音がした。
それがなければ、俺もプジョル殿も気づかないところだった。
「ふたりとも楽にしてくれないか」
我が国の皇太子殿下にそう言われて、プジョル殿の方をチラリと見ると頷かれたので、ふたりでほぼ同時に顔を上げた。
なにやらプジョル殿が我が国の皇太子殿下に向かって、憮然としている。
「ねぇ、ウィリアム。先日、俺にセドリック殿からミクパ国のことで脅されていると偽の情報を吹き込んだだろう。この俺は彼が人を脅すようなそんな人物ではないとわかっているから、すぐにウィリアムの嘘だと見破ったけど、事態が事態なんだよ。ウィリアムと言葉遊びをしている時間はないんだ。なんでそう、俺を試そうとするんだ」
プジョル殿が殿下のことをウィリアムと呼び捨てにしてやや睨んでる。
このふたりは従兄弟同士で、学園でも四六時中一緒だったと聞いたことがある。
プジョル殿は、普段は「皇太子殿下」と呼ばれているから、「ウィリアム」と呼び捨てにされているいまは、相当に皇太子殿下に対してお怒りなんだろう。
「いや、アーサーを試した訳ではないんだ。ただ、お前ならすぐにわかると思っていたが、やっぱりすぐにバレていたんだ」
「ウィリアム、今回は悪ふざけが過ぎるぞ。俺でなければ外交問題にもなるところだ。そろそろ、俺が本気でウィリアムを見張るぞ」
皇太子殿下が面白いぐらいプジョル殿にタジタジだったのに、その言葉を聞いて皇太子殿下が急に元気になった。
「ようやく、俺の元に来てくれる気になったんだな!」
皇太子殿下が目を輝かせている。
「その話はこの事態が落ち着いたらゆっくりしよう」
プジョル殿は冷たくて皇太子殿下に言い放つと、そんな様子の殿下を尻目に怒りの矛先を俺に向ける。
「セドリック殿もウィリアムに少しは怒れよ。アレに悪者にされそうになっていたんだぞ。俺がすぐに気づいたから、ことなき事を得たんだぞ」
「お気遣いをいただき、ありがとうございます。いまは大丈夫です。いざとなったら、皇太子殿下の弱みを握っております故」
「「ええっ???」」
皇太子殿下とプジョル殿が目を合わせて驚いている。
ミクパ国の皇太子殿下におかれては、ずっとこの珍妙なやり取りを笑いながら聞いておられる。
「俺の弱みってなんだよ?セドリック、言ってくれ」
皇太子殿下が鬼気迫る凄みで聞いてこられる。
「皆様の前で申し上げてよろしいのでしょうか?」
「あ、いや、ちょっと待て。なに関係なんだ?女性か?」
「女性関係もあるのですか?」
「あ、いや、それはーーーもある」
思わず笑ってしまいそうなのを堪えて、机の上に置いていた紙とペンで数字を書き、ヘソをポンポンと叩いて、皇太子殿下を見た。
「これくらいですよね?」
(皇太子殿下のヘソクリのおおまかな額を書いたが通じただろうか)
皇太子殿下があわあわと狼狽える。
プジョル殿とミクパ国の皇太子殿下が紙を覗き込もうとすると、殿下は俺から紙を奪い取った。
「セドリックが恐ろしすぎる」
「理由付けの資料もご用意ができますがいかがされますか?」
「もう本当に止めて。参りました。このお詫びはこの件が落ち着いたら必ずふたりになにかを必ずさせていただく!!」
この後に、プジョル殿から俺に恐ろしすぎる耳打ちをされたがそれはまた後日に。
それからは4人で席に着いて話し合うことになった。
プジョル殿は皇太子殿下のふざけた嘘をすぐに見破ったのち、すぐに公爵家の影に調査をさせていたらしい。
だから大体のことは把握しておられ、今日は俺と情報を擦り合わせするつもりだったのだ。
それに俺が先日、女性とこのレストランに出入りしたりしていた理由は、ミクパ国絡みの仕事だと、おおよそのことはわかっておられた。
「ウィリアムもそしてアトレイ殿とも先日にご挨拶をさせてもらったが、初めての顔もあるので、もう一度自己紹介をさせてもらう。私はヨゼフでミクパ国の皇太子だ。皇太子がふたりもいるので、私のことは「ヨゼフ」と呼んで欲しい」
ミクパ国の皇太子殿下は、まだ若い。10代後半から20歳ぐらいまでだろう。
凛とした雰囲気で、金髪の短髪がよく似合う青年だ。
先日このレストランに、女性の諜報員と不倫カップルを装って入っていくところをシェリーに見られ、シェリーを泣かせることになってしまったが、俺はこのレストランのオーナーでもあるミクパ国の皇太子殿下と厄介な事態で極秘に会っていたのだった。