翔太くんは自分が甘えさせてもらって、甘やかしてもらってるって思っているけど
たぶん心の奥底の部分ではむしろ、俺が甘やかされてるんだろうと感じる
俺の美しい人は、なんだかんだで大人で優しい人なのだ
今日は9人での仕事の日
俺は朝から1つ仕事をしてから楽屋に向かった
翔太くんも確かここの前に仕事が入っていて、まだ来ていなかった
ソファに座るとラウールが隣に腰掛ける
「めめ、おつかれ」
「ん、おはよう、ラウール」
いつも通り仕事の話などをしながら、みんなが揃うのを待つ
「おはよう、翔太」
「あべちゃん、おはよう」
「翔太、おっつー!」
「おぅ、佐久間おはよ」
翔太くんも到着したみたいだ
「しょっぴー、おはよう」
「おつかれさま、翔太くん」
「ん、ラウ、めめ、おはよ」
俺の目を数秒じっと見た翔太くんが口を開く
「ラウ、今日は俺が真ん中座っていい?」
「ん?うん、どーぞ!」
(あー、これは、バレたな…)
俺たちはよく3人でいるが、並び順は特に決まってなくてバラバラだ
あえて聞くのは何かある時だけ
我慢できないほどではないが、実は今朝からあまり調子は良くなかった
よく一緒にいるラウールにバレなかったから誤魔化せると思ったんだけど
(ま、気づかなかい訳がないか)
自分で言うのは口幅ったいが、俺が翔太くんを大好きなように、翔太くんだって俺のことが大好きなのだ
気にかけて見てくれてるのは当然だ
ここ最近は翔太くんとの時間もあまり取れてなかったから、メンタル的な意味でもちょっと元気はなかった
「ラウ、あのさ、〜〜」
「ん?あぁ、あれね!実はさ、〜〜」
翔太くんは俺が話さなくてもいいようにラウールと会話を始めた
ラウールも翔太くんの最初の一言で察したのか、俺に話を振ってこようとはしなかった
腕越しに久しぶりに感じる、身体に馴染んだ体温が心地いい
俺の太ももの上にさりげなく置いた手が一定のリズムを刻んでいて、次第に瞼が落ちてくる
「あ、めめ寝そう」
「ラウ、しーっ」
コソっと2人がかわす会話が頭の中を滑る
睡魔に勝てず意識を手放す刹那に、翔太くんの手を握った
「めめ、起きて、そろそろだ」
優しい声に瞼をあげる
いつのまにか翔太くんの肩にもたれかかっていた
「ん、翔太くん、ありがとう」
「めめ、大丈夫?」
「うん、ラウもありがとう」
「でもやっぱ、しょっぴー流石だね。俺は全然わからなかったよ」
「まぁな、ほら行くぞ」
今日は番組撮影のあとに、雑誌の撮影があって、最後に練習だ
9人での仕事を詰め込んでいる
番組撮影は無事に終わり、雑誌撮影に臨む
撮影途中で一時休憩の時間に入ると、翔太くんが近づいてきた
集合写真で前列に座っていたから俺の方が少しだけ目線が下だ
俺の目の前に立って顔を覗き込む
「めめ、大丈夫か?」
心配を滲ませた声色に深い愛情と優しさを感じて、心が安らぐ
思わず腕をそっと引っ張り抱きしめる
ちょうど翔太くんの胸の辺りに俺の顔がくる
深呼吸をすれば、大好きな香りに包まれる
「わ、ちょ、めめ?」
「ちょっとだけだから」
「……もぅ、ここ、仕事場だぞ」
そんなことを言いながらも、腰に両腕を回す俺の肩を上から抱きしめながら頭を撫でてくれる
目を閉じて、翔太くんの手を、匂いを、温もりを、めいっぱいに感じる
「おつかれさま」
「めめはえらいよ」
「よくがんばってる」
「だいすきだよ、めめ」
「ドラマみたよ、かっこよかった」
ゆっくりと落ち着いたささやき声が降ってくる
愛しさが胸に満ち溢れ、ふわふわと気持ちが上昇して気持ちがいい
「そろそろ始めますー!」
撮影再開を告げるスタッフさんの声がするまで、俺はその優しさに包まれていた
「がんばれるか?」
「うん、ありがとう」
「今日は、一緒に帰ろう」
「うん」
翔太くんは最後にもう一度、そっと俺の頭を撫でて自分の立ち位置に戻っていく
「あ、めめ、ちょっと顔色良くなったね」
「そう?なら良かった」
「ふふ、めめはしょっぴーがいれば大丈夫だね」
「甘やかしてもらってるよ、ほんと」
「うふ!らぶらぶだね〜!笑」
戻ってきたラウールに小声で揶揄われながらも撮影は順調に進む
今日は一緒に帰れる
それだけで俺の心はいとも簡単に軽くなって頑張れてしまうのを、あの優しくて可愛い人はきっと知る由もないのだ
本編 終
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