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#追放
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カエデです!こんにちは!
奈落の底っていう怖いところでサクラを探してます……。
奈落ってね、暗いし怖いんだけどね──石の質はいいです!
だからまぁ……
命の危険はあるけど石はいいから……プラマイ石かな!
*
「──よし。いくよ!“新生☆魔王軍”!」
エストちゃんの一声が、暗くてジメジメした奈落の底に響き渡ったんだぁ。
行方不明のサクラを探すために、いざ出発!
……のはずだったんだけどね。
「お姉ちゃん、どこだろう……」
エストちゃんがオロオロ。
「──光よ沈め、闇よ吠えろ……その狭間にて、必ず見つけ……でもここ、暗くて怖すぎるわよぉぉ!」
ツバキは情緒も迷子。
「この試練こそが聖女様をより高みへと導くのです、ふふ、ふふふ……」
嬉しそうなローザさん。
「……とりあえず、横から来る敵に備えておきますね。皆さん、落ち着いて」
冷静に周囲を警戒する辰美さん。
「この奈落は怖い場所だけど、みんな楽しそうで良かった。」
私はみんなを見つめてから言いました。
「楽しくねーよ!?」
ツバキが驚いた顔で私を見てました。
*
サクラ探索の休憩中。
私はひとり、周辺をうろうろし、地面に這いつくばってました。
理由は一つ。
日課の“良い形の石”探しをするため!
微かな光を頼りに、泥んこになった石を一つずつ拾い上げて、そのまぁるい曲線とか、ずっしりした重みとか、すべすべの質感を確かめていくんだぁ。
そして、ついに運命の出会いが訪れちゃったの!
「お! なかなか良い形の石みっけ!
えへへー、ツルッツルじゃん!」
至福の表情でまん丸の石にすりすり頬擦りしてた──
ちょうどその時!
奈落の静寂を切り裂いて、どこからか声が響いてきました。
『……力が………欲しいか? ……なの』
「えッ? ……な、なに……?」
あまりの衝撃に、大切な石を落としそうになっちゃった。
周りを見渡してみても、誰もいないの。
濡れた岩肌と、得体の知れない真っ暗闇が広がってるだけ。
声は直接、頭の中に響いてたんだぁ。
『……力が……欲しいか? なの』
「あ、やっぱり直接頭に……」
不思議だなぁと思いつつも、私はその声に耳を傾けました。
オヤツくれるかもしれないしね。
『……力が……欲しいか……? ……なの』
……あ、オヤツじゃない。
じゃあいいや。
「いいえ」
だって、欲しくないんだもん。面倒くさいし。
『えッ?』
「えッ?」
頭の中の声の主さんが、驚いてた。
『……力がッ! 欲しいかッ? ……なのッ!』
「いいえ」
今度は少し食い気味に、焦ったような声が響いてきたけど、私ははっきりとお断りしたの。
「………………………」
「………………………」
流れる沈黙……。
聞こえるのは、奈落の不気味な風の音だけなんだぁ。
『ち! 力がーッ! 欲しいかあッ!? ……なのぉーッ!!』
「いいえ」
声が少しヒステリックに裏返っちゃった。
三度目の正直って言うけど、私の答えは一ミリもブレないよ。
だって戦いたくないし、力なんてあったら余計なお仕事が増えちゃうだけだもん。
オヤツの話まだかな?
『力がさ……欲しいってさ……言ってよ……お願いなの……』
ついに泣きが入っちゃった。
私は少しだけ良心がチクチク痛んじゃったんだよね。
「え……あ、はい……じゃあ欲しいです……」
可哀想になっちゃって、つい話を合わせちゃったの。
『よかった……ち! 力が欲しいのなら——くれてやる! こんにちはなの。カエデ。やっと会えたのなの』
声がね、今度は足元から聞こえたの。
視線を落としてみたら、そこにはちょこんと、ちっちゃな影がありました。
「こ、こびと……さん? こ、こんにちは!」
『私は精霊のイシーダなの。選ばれた人間にしか私は見えないのなの』
こびとさんは、満足げにニッコリと笑って自己紹介を始めてくれたの。
「え? 精霊さん? こここここ! こんにちはッ!」
『私はね、カエデ。貴女をとても気に入っているのなの。だからカエデに力を与えに来たのなの』
「えー! 私に!? どんな力を与えてくれるんですか? 火かな? 水かな?」
期待に胸を膨らませる私を前にして、イシーダちゃんは急に視線を泳がせちゃったんだよね。
『……投石……なの……。私は……そう……投石の精霊……なの……』
さっきまでのドヤ顔が、一瞬で申し訳なさそうな顔に変わっちゃったの。
「………? ……と…………ぅせ……き……?」
『……そうなの。投石なの。石の精霊じゃないのなの。
間違えないでね、投石の精霊なの。
……カエデのテンションがあからさまに落ちててショックなのなの……』
「えっと……精霊って、もっとこう、華やかなイメージが……投石って、ただ石を投げるだけですよね?」
『カエデ? 細かい事は気にしちゃダメなの。
私だって火とか水とか、風とかに憧れたのなの!
悔しい! ホントに悔しい……
突然ね、涙が溢れてくる時もあるの。
学校でも、ちくしょう……あいつら、許さない!
許さないいいいーーーッ!!! ……なの』
地団駄を踏んで、地面に突っ伏して泣き出しちゃう精霊さん。
そのちっちゃな背中があまりに哀愁に満ちていて、
私はかける言葉を失っちゃったんだぁ……。
「えっと……泣かないで……学校……?」
『うん……ありがとうなの。現実に残酷なの』
全てを悟ったようなイシーダちゃんの瞳。
その真っ直ぐな視線が、逆に辛かったなぁ。
『そんなことより、今日は新しいスキルを授けに来たのなの』
「え! スキル!? やったー!」
イシーダちゃんが手をかざしてくれたの。
期待に、私の大きな胸がぽるんと弾んじゃった。巨乳だしね。
『新しいスキル。それは……あ! ちょっと待つのなの。
――うん! そうだよママー!
ご飯もうすぐ食べるから待っててってばー!
今大事な話してるんだからー!』
「……あれ? 普通に喋れるんですね?」
『………………………気のせいなの』
「え……でも今、お母さんと普通に……」
『…………………………………………』
再び、イシーダちゃんの目が泳いじゃってる。
『……もういいの! 帰るの!』
「あ! 待ってください! 何も気にしてませんから!」
慌てて帰ろうとする、その小さな腕をギュッと掴んで引き止めたの。
『……じゃあ気を取り直して。スキルの話。
それは【メテオストライク】というのなの。
アルティメットスキルなの』
「えー! めっちゃカッコいいッ!!!」
メテオ! なんだかすっごく素晴らしい響き!
これならみんなに自慢できちゃうかも。
私の胸はさらに弾みまくっちゃった。
『じゃあ授けるのなの。
目を瞑って、胸を張って、歯を食いしばるのなの』
「は! はい!」
私が指示通りにポーズをとってみたら──。
『フンッ!』
ビターーーーーンッ!
「痛ッ!?」
あろうことか、イシーダちゃんの手が、私の胸に激しいビンタを叩き込んできたの!
「痛いッ! って、なんで胸!? えぇ……?」
『ふぅ。これで解放なの』
「目を瞑って胸張ったのは、ビンタしやすくするため……?」
『……なんか、そこにイラっとしたんだよ。やたらとな』
「語尾どこ行ったの!?」
『マジで要らなくない?
それ。邪魔じゃないの?
なぁ、取れば? 取れよ、なぁ?』
「普通に喋ってるし態度悪いよ!」
その時、頭の中に無機質な天の声が響いてきたの。
【カエデは条件を満たしました。アルティメットスキル《メテオストライク》を解放します。ちなみにレベルは1のままです。お前なんかポンコツのままです】
「……ひどいや」
『イシーダ! ご飯冷めるわよ! 早く降りてきなさい!』
『ママー! 今すごく大事な説明中なのー!』
『おばあちゃんも待ってるんだから早くしなさい!』
『と、とにかく石をこう……上にポイッと投げたら──詳しくはまた今度ー!』
イシーダちゃんは慌てて荷物をまとめるみたいにして、シュッと姿を消しちゃったんだぁ。
『……なの』
「……語尾のこだわり!!
っていうか、上に投げたらどうなるのー!?」
私の叫びは、ただ虚しく闇の中に吸い込まれていきました。
ちょっと今から石を投げてみようかな?
「よし、いくよ!ウィルソン」
私は石(ウィルソン)を握りしめて振りかぶった──。
(つづく)
*この画像はあくまでもイメージです。実際のイメージと異なることがあります。