テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
125
100
#創作BL
灯依
880
こはる
498
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
夜が、薄くほどけていく。
空の端に朝の光が滲みはじめた頃、
私とエスヴェルは歩き続けていた。
もう誰も使わず、廃線寸前の線路。
「へぇ、ここにするんだ。
以外だね!」
「うん。……露乃と一緒に見た線路だよ。」
その名前を口にした瞬間、
エスヴェルの瞳が微かに揺れた。
プログラムの記録には存在しない感情の波。
「ごめんね、私はハウスエスヴェル。
あなたの最後をお手伝いする、ロボットです!
でも、あなたの記憶の中で、私が模倣した彼女はいつも笑ってた。」
「でも、最後は泣いてたんだ。」
エスヴェルは一歩、線路に足を踏み入れる。
「早く早く!」
朝露が光を弾いて、足元で砕けた。
まるで露乃という名そのものが、
この世界にほんの少しだけ残っているみたいだった。
「ねぇ、本当にいいの?まだ__
ここなら辞められる。
本当にいいの?」
「いい、いいの。
でも…もし、少しだけ時間があるなら__
もう一度、笑ってくれない?」
エスヴェルは目を細めて、微笑んだ。
完璧な模倣、けれど確かに“人間のような”笑顔。
「……了解。では、これはプログラム外の行動です。」
彼女はそっと私の手を取った。
指先が冷たいのに、不思議と心が温かくなる。
遠くで風が鳴り、線路が震えた。
「……露乃。」
「どうしたの?」
「もう一度、名前を呼びたかっただけ。」
やがて、朝日が昇る。
世界が金色に染まる瞬間、
私は確かに“あの子”と同じ景色を見ていた。
そして、光の中に溶けていく彼女の姿が、
最後まで__涙を流していたように見えた。