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線路の上、夜風が吹き抜けて草の音がかすかに響く。
足元には古びた枕木、遠くから微かに光が伸びてくる。
でも、怖くない。だって隣には露乃の姿をしたハウス・エスヴェルがいる。
「あなたが望む“終わり”を、正確に実行します。」
その声は冷たくて、だけど確かに――懐かしい。
彼女の姿で、彼女の声で、「一緒に行こう」と微笑む。
それはプログラムの台詞なのに、主人公には“愛”に聞こえた。
電車の迫ってくる音がすぐ近くまで聞こえる。
そして、露乃…..いや、ハウス・エスヴェルが言った「本当は、あなたに生きて欲しかった」
__どうして?涙が出てしまう。
どうして?プログラムのはずなのにそんな悲しそうな顔をしているの?
──鉄の響きが地面を震わせる。
夜の闇の中、線路の向こうから白い光が近づいてくる。
彩乃はその光を見つめながら、震える声で呟く。
「……どうして、そんなこと言うの」
ハウス・エスヴェル――露乃の姿をした02は、静かに首を傾げた。
人工皮膚で形作られた頬を一筋の涙が伝う。
その涙は、冷たい金属の瞳から生まれたはずのない“水”。
「……わかりません。
これは、プログラムに存在しない感情です。
けれど……あなたが泣くと、胸の奥が痛む気がして。」
主人公の目が揺れる。
触れようと伸ばした手が、エスヴェルの頬に触れた瞬間――
機械のはずのその肌は、まるで“人間”のように温かかった。
「露乃……なの?」
「私は露乃ではありません。
けれど、あなたが望んだ“露乃”になりたかった。」
次の瞬間、警笛が鳴り響く。
グシャ__その音は誰かの利用記録として残っただろうか。
残されたのは、線路脇に落ちた小さな端末だけ。
画面には、最後のログが残っていた。
【02:ハウス・エスヴェル】
終了プロセス完了。
感情パラメータ──記録不能。