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4月18日: この文書を残すにあたり、まずは感謝の意を伝えたいと思う。私の記憶に残っている最後の日付から、おおよそ5年が経過していることだろう。今私の身に何が起きていて、どのような状況にあるのか、正確なところを把握することはできない。しかし恐らくは私はもう死んでいるか、あるいは死にかけであり、あの時あの場所で遭遇した存在……『何か』としか表現できないが、その脅威から逃れることができたのだと思っている。こうして意識を持ち、文章を書き記すことができるのがその証拠であろう。
さて、このような状況になって以降、私なりに研究を進めてきたのだが、やはり私自身の身体に変化が生じていることはほぼ間違いないと思われる。当初は自分の感覚器官に対する影響が大きいのではないかと考えていたが、どうやらそうではないらしい。私が今ここにこうしていること自体が、この現象が私のみに起こっているものではないということを証明していると言えるだろう。少なくとも現時点では私と同じ現象に陥っている人間は発見できていない。つまり現状、同様の事例に遭遇しているのは私一人だけということになる。
そこで私は一計を案じた。これがどれほど有効な手段なのかは不明だが、仮に効果が認められない場合にはまた別の手段を考えればよいだけのことだ。先ほど述べたように現在私の身に降り掛かっている事象についてはある程度把握できているため、それをまとめて記録しておくこととしよう。
まずはそうだな……『視覚』『聴覚』『嗅覚』『触覚』の順で書き記していくことにする。
1日目: 結論から述べると、効果は認められなかった。
2日目:
『視覚』について。私自身が経験した事実を記すことに抵抗はあるが、これは私自身の精神状態を保つために必要な作業であるため、あえて記載する。
この手記の執筆時にはおそらく既に夜であったものと思われるが、私が目覚めるまでの間は暗闇に覆われていたと思われる。それが目覚めた直後に目にしたのは、白い空間だった。正確に言うならば天井まで伸びる直方体の空間に私は閉じ込められていた。高さは3メートル強ほどか。しかし、その大きさにもかかわらず圧迫感は感じられない。光源と呼べるものはなく、壁面自体も白く発光しているような状態に見える。光源については定かではないが、視界は良好であるといえた。