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皇太子用の執務室。
騎士団演習の時間を15分も過ぎてなお現れない主君を捜し、ギルバートは苛立ちを隠さずその扉を蹴り開けた。
「殿下ッ! 演習場に現れねえと思ったら、どこで油売って――……ッ!?」
そこで目にした光景に、ギルバートは言葉を失った。
西日の差し込むソファに崩れ落ちているカイル殿下。その姿は、まさに『惨状』だった。 正装用の軍服は無残にはだけ、胸板が露わになっている。髪は乱れ、頬は上気し、荒い吐息を吐くその姿は、まるで強敵と死闘を繰り広げた直後のようだった。
「殿下ッ!? まさか、刺客が!?――」
ギルバートが駆け寄ろうとした、その時。 殿下の首筋にクッキリと刻まれた、鮮やかな口紅の痕跡が目に飛び込んできた。
(……はあ。真っ昼間から、『公務(夜の部)』に精を出されてたんすね。この主君は……)
ギルバートは抜こうとした剣を「カチャリ」と虚しく鞘に戻すと、死んだ魚のような目で、深すぎる溜息をついた。
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