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「……ギ、ギルバートッ!? な、なぜここに!?」
「迎えに来たんすよ、殿下。演武場で百人の騎士が、首を長くして主君の御成りを待ってるんでね。……悪いっすね、大事な『ご休憩中』にお邪魔しちまって」
「ち、違うんだ! これは、その、少し昨夜からの疲れが……。わかった、今すぐ行く! すぐにだ!」
カイル殿下は慌てて立ち上がり、はだけた軍服の前をかき合わせた。だが、騎士の鋭い観察眼は、さらなる異常を逃さなかった。
「殿下。……肝心のサファイアはどこに置いてきたんすか? 装飾が根こそぎ持っていかれて、糸がブチブチですぜ。……一体どんな攻防戦を繰り広げたら、そうなるんすか?」
「っ!?」
殿下は自分の軍服を見下ろした瞬間、顔面が沸騰したかのように真っ赤に染まった。彼は逃げるように後ずさり、両手で顔を覆いながら、聞かれてもいない言い訳を猛烈な勢いでまくしたて始めた。
「ち、違うんだギルバート! これには、その、物理的な構造上の不可抗力が働いて、偶然取れたのだ!」
ギルバートは、生暖かい視線を投げかけた。
「……はあ。要するに、装飾をブチ壊すほど妃殿下と激しく『組み合ってた』ってことっすね?」
「……っ! 広義の意味ではそうなるのかもしれないが! 淑女である彼女の名誉のために言っておくが、彼女はただ、俺を強く求めてくれただけで……!」
(……はあ。聞いてるこっちが恥ずかしいぜ)
「……はいはい、左様で。お盛んなことで何よりっすよ。……で、腰は大丈夫なんすか? 今日の演習、『腰痛(名誉の負傷)』ってことにして休みにしときますぜ?」
「いや、行く! 今すぐ行くと言っているだろうッ! お前は余計なことに気を回すな!!」
飛び出すように部屋を出てい行く殿下を見ながらギルバートは思った。
(この分なら、お世継ぎの心配はいらねえな……)