テラーノベル
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21話目もよろしくお願いします!
スタートヽ(*^ω^*)ノ
薄暗い公園のベンチに、ひとり佇む影。
びしょ濡れの髪が顔に張り付き、声にならない嗚咽が夜空に響いていた。
キヨは息を呑んだ。
こんなにも、誰にも見せない弱さをさらけ出すレトさんを、今まで知らなかった。
『レトさん……』
恐る恐る、背後から近づく。
驚かさないように、そっと。
泣きじゃくるレトさんの肩を、ゆっくりと両手で包み込むキヨ。
彼の震える身体が、小刻みに震えているのが伝わった。
『ごめん、レトさん……本当にごめん。』
キヨの声は震えていた。
すると、レトさんがふっと小さく息を吐き、ゆっくりとキヨの腕に身を委ねた。
「……俺も……ごめんなさい……」
嗚咽が少しずつ止まっていく。
抱きしめたまま、キヨは自分の感情を抑えられず、静かに涙をこぼした。
『レトさんのこと……傷つけてごめん。せっかく会えたのに。泣かせてごめん』
夜の冷たい雨音が、ふたりの間を優しく包み込んだ。
レトルトを抱きしめたまま、キヨは話し始めた。
『実は俺、今日の昼間のこと、全部見てたんだ。ストーカーとかじゃなくて、仕事の合間に向かいのカフェで休憩しててさ、、、。
うっしーと楽しそうに笑い合うレトさんの姿見てさ。
正直、胸の奥がザワザワして、どうしようもなかった。』
今まで、こんな感情なんて知らない。
嫉妬――いや、それ以上の何か。
『俺、こんな気持ちになるなんて思ってなくて。
それで、わけわからなくなって、レトさんに冷たく当たってしまった、、、』
『ごめん。俺、レトさんが思ってるより、全然優しい人間じゃない。
自分の弱さも隠せなくて、ほんと情けないやつだよ。
でも、俺レトさんのことは、絶対に手放したくない』
『――こんな俺なけど、まだ一緒にいてくれないかな、、、?』
キヨの心臓の音が伝わってくる。
とても激しく、そしてあたたかく。
さっきまで冷め切っていた心がキヨの言葉で温められていく。
キヨの声が胸に深く刺さって、俺の沈んだ心が少しだけ動き出した。
「キヨくん……俺、今日の服、実はな……キヨくんために選んだんやで。」
声が少し震えて、でも誠実な気持ちが溢れていた。
「うっしーは親友で……俺のことを一番理解してくれてる人。」
「だから、一緒に買い物に来てくれって頼んだんだよ。俺ひとりじゃ、外に出るのも怖くて何も決められへんから。」
レトルトはキヨの手をぎゅっと握った。
「こんな俺やけど、これからもキヨくんと一緒に歩きたい。」
「……キヨくん、俺のこと、嫌わんといてや。」
言葉の端々に、不器用だけど真っ直ぐな愛がこもっていた。
ずっと俯いていたレトルトが、ゆっくりと顔を上げた。
その瞳は、どこか不安げで、けれど確かな決意を秘めていた。
「キヨくん……」
二人の視線が、初めてしっかりと重なる。
雨が激しく降り注ぐ中、時間が止まったように感じた。
周りの音も、冷たい雨粒も、ふたりの世界には届かない。
キヨは自然と、レトルトの顔へと手を伸ばす。
レトルトもその手を静かに受け入れ、そっと唇を重ねた。
大粒の雨が頬を伝うけれど、二人の間に流れる熱はそれを凌駕する。
初めての、だけど確かな甘いキス。
全ての言葉を超えて、心が繋がった瞬間だった。
つづく
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