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私と栞ちゃんが一緒に帰ろうとしていたときだった。同じ教室の男の子から声をかけられた。
「佐藤さん、中川さん、合コンに興味ない?」
(またか)
栞ちゃんはみんなの憧れの的であり、お近づきになりたいと思っている人だ。だから、こういう誘いをよく受ける。私はおまけみたいなものだ。栞ちゃんは同性愛者ということもあって相手に嫌な思いはさせられないと普段、こんな誘いは受けない。しかし、今日は違った。
「うーん、イケメン来る?来るなら行こうかな」
(イケメンになんて微塵も興味ないって言ってたのに)
「栞ちゃん、お付き合いしている人怒らないの?」
「全然大丈夫だよ、ねー?」
そのときの栞ちゃんは誰かに話しかけるようにして同意を求めていた。けれどそんな相手は周りにおらず、私は少し違和感を覚えた。
その晩は栞ちゃんと誘われていた合コンに向かった。けれど、その日の栞ちゃんはやはりいつもと少し違っていた。明るいところは変わらないが、目がギラついていてまるで何かを狙っているようね目をしていた。男の人に必要以上に話しかけていてとても以前の栞ちゃんだったら考えられないような行動ばかりとっていた。
そんな栞ちゃんを私はとても心配していた。そろそろ帰って休んだほうがいいんじゃないかなと考えていたとき、不意に誰かが話しかけてきた。
「佐藤さん、楽しんでる?」
話しかけてきたのは顔が整った色白の男の子だった。
(もうみんなの名前覚えたのかな)
今日の参加人数は私を入れて10人以上いるため、隅にいる私のことまで覚えているのは、すごいと思った。
「楽しんでます。すみません、お名前教えていただけますか?」
正直、最初の自己紹介は栞ちゃんのことで頭がいっぱいで全く聞いていなかった。彼にもそれがバレたのか。
「自己紹介、聞いてなかったな?」
と言って笑ってた。私はその笑顔に一目惚れだった。私の中に新しい感情が芽生えたときだった。
「水野颯だ。よろしくな」
水野くんは笑いながら名前を教えてくれた。その後も彼とはたくさんの話をした。人見知りなはずなのに水野くんには色々なことが話せて、短時間の間に自分でも信じられないほど惹かれてしまった。連絡先を交換して、2人で会う約束までできた。また水野くんと会える機会があると思うと、私はとても嬉しかった。栞ちゃんのことなんかすっかり忘れてしまっていた。